机上の池袋【折原臨也】 (ページ20)

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20話ページ20

ガゼルとライオン、カエルとヘビ

弱肉強食時代の名残だろうか、本能的な恐怖を感じるよね平和島静雄。

｢やだなぁシズちゃん。君に僕の罪をなすりつけた事、まだ怒ってるのかな？｣

｢怒ってないぞぉー。ただ、ぶん殴りたいだけさぁ｣

さっきからわざと語尾を伸ばして温厚な喋り方をしてるのがなお不気味だ

臨也さんも僕だなんて気持ち悪い

唖然と一触即発状態の2人を見ることしか叶わず逃げるタイミングを逃した

身を呈して臨也さんを守ることなんてしない、けどここで逃げても先程に臨也さんに当たったゴミ箱が今度はこっちに吹っ飛んできそうで...動くに動けない

｢困ったな、見逃してよ｣

未だにふらふらとした足取りでこちらに近寄る臨也さん

あれ？

え？なに

｢えっ、ちょ、巻き込むの勘弁...｣

｢今デート中なんだよね、彼女と｣

肩を抱き寄せ臨也さんの方へ引っ張られる

｢...ぃゃぃゃぃゃ...ぇ...｣

平和島静雄の方をちらりと見るとさっき浮かび上がった血管が更にぐんと力強く浮かび上がる

｢そんなの俺に関係...あれ、お前｣

彼の横にはえていた標識を片手で軽々と引っこ抜きまさに振り下ろそうとした瞬間にぴたりと止まる

｢この前、逃げたやつだよな｣

かちりと掛けていたサングラスを標識持った反対の手で直す

｢...違います｣

｢お前散々関係ないとか言ってよぉ...嘘、ついてたのか｣

｢...嘘じゃないです｣

｢それにさっき彼女とかって言ってなかったか｣

｢...付き合ってないです｣

だぱーと涙が止まらない、え？なにこれ死ぬ？

隣に立つ臨也さんは遠くの方向を見つめている

｢えっ、何してんすか、臨也さんもなんか言ってくださいよ...付き合ってませんよね...未成年者淫行反対...｣

｢...んー、そろそろかな｣

｢は？｣

いつ標識をバットで野球ボールのようにカッ飛ばされるか分からない時に何してんだろこの人...生きるのに飽きちゃったのかな...

｢もういい｣

｢え？｣

｢もう分かった｣

さっきとは打って変わって顔に浮かべていた青筋なんて嘘みたいに晴れやかな笑顔

｢え、何を...｣

｢手前らが嘘つきだってのはよぉーく分かった｣

｢ちが...！｣

笑顔、に変わりはない

臨也さんとはまた別のタイプの人を威圧する笑顔

｢もういいから黙ってろ！！！！｣

びゅんと標識が風を切る音

投げたのだ、標識

あれって確か1トン近い力で抜かなきゃダメだよなぁ、さすがにどこからぶつかっても痛いよなぁ

死を覚悟した脳は割と冷静だった