入学式-2 ページ4
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程なくして暴れていた狸が捕まり、私のペットではないというと、
絶対に大魔法士になってやるんだゾー！と叫びながら部屋の外に追い出されていた。
どうして狸くんはあそこまで必死になっていたんだろう、とぼんやり考えていると、いつの間にか入学式が終わり、みんなちりぢりになっていた。
「学園長、そちらの女性はどうするおつもりで？」
「このまま闇の鏡で故郷に帰します」
「それは残念だ、使えそ…この学園が華やぐというのに」
「(使えそうって言った…)」
胡散臭い笑みを浮かべたメガネの美人はそのまま踵を返し、部屋から出ていった。
何に使えると思ったのだろうか。
「ということでユウさん。大変残念なことですが、貴方には、この学園から出ていってもらわねばなりません」
「いえ、全然残念じゃないです、嬉しいです」
「…闇の鏡がすぐ故郷へ送り返してくれるでしょう、さぁ扉の中へ」
まだ慣れない大都会を強く念じる。これでやっと夢から覚める。
「さぁ闇の鏡よ！この者をあるべき場所へ導きたまえ！」
「…」
「ゴ、ゴホン…もう一度。闇の鏡よ！この者を…」
「どこにもない」
「「え？」」
「この者のあるべき場所はこの世界のどこにも無い。無である」
「えぇ！？！？」
そんなはずはない。私は昨日まで確かに学校に行って、友達と過ごして、家族とご飯を食べて、おやすみなさいと言った。あそこが私のあるべき場所だ。
「そんなこと有り得ない！」
「…」
「そもそも貴方どこの国から来たんです？」
「に、日本です」
「…聞いたことのない地名ですね」
「えっ」
「私は世界中からやってきた生徒の出身地は全て把握していますが、そんな地名は聞いたことがない」
「そんなことあります？」
「一度図書館で調べてみましょう」
クロウリーさんの言葉に従い、グリムと名乗っていた狸に追いかけられた場所まで戻った。相変わらず夢だと思いたくなってしまう様な不思議な空間だ。
クロウリーさんと協力して片っ端から地図を確認するが、結局日本はどの本にも載っていなかった。クロウリーさんいわく有史以来どこにも日本は見当たらないらしい。試しに東京も調べてみたが見つからなかった。つまり現状、私の帰る場所はこの世界のどこにもないと言うことだ。
「…どうしよう、部長」
＿＿＿＿＿
ユウ
帰宅部なのに帰る場所がない
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作者名：日七海 | 作成日時：2024年3月16日 0時
