すれ違いラブストーリー【kazunari】 (ページ12)

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滲んで消えた。ページ12

櫻井先輩は絶対に、裏表がある人だ。

私の頭の中で、この人に近づくなって警報が鳴り響く。

とっさに目をそらして、雅紀の制服の袖口をつかんだ。

すると雅紀は何かを察したように、私をかばうようにすっと前に出て

「じゃぁね、翔ちゃん。悪いんだけど、Aが体調悪いみたいだから。」

って。

櫻井先輩と一緒にいた…きっと雅紀が一目ぼれした女の子は心配そうにこちらをのぞき込んでいた。

いいの？きっとまだ一緒にいたいでしょう？

なんて思いながらも、私を優先してくれたことに喜びを感じる自分。

……私、嫌な子。

大きくてぱっちりした目、細くて華奢な体、つやつやの唇…

守りたくなる女の子って、こんな感じなんだろうな。

私は持っていないものを、この子はたくさん持っている。

あぁ、こんな子にかなうわけないやって。

目頭が熱くなって、あぁ、こんなところで泣いちゃダメだってわかってるのに。

ぽろっとこぼれた涙は、地面には落ちずに雅紀の服に滲んで、消えた。