モテたいわけじゃない。【名探偵コナン】

いいとこさがし5 ページ49

「はい、どうぞ」




小さなテーブルに2人分のご飯を用意して、畳の上に座布団を敷いて座る。




「有難う。いただきます」

「いただきます」




しっかりと手を合わせてから、そう言った。




「……どうですか？」

「ん、うまい。いくらでもいけそうだ。でもやっぱり、肉じゃがはそのままのやつも食べたかった」

「なら良かったです。肉じゃがはまた今度作りますので、今日は我慢してください」




降谷さんは私の作ったものをまずいと言ったことがない。


そりゃ、今は美味しく作れてるとは思うけど、最初の頃なんて目も当てられなかった。


それくらいに酷かった。


それなのに、降谷さんはいつも「うまい」とそういう。


私が初めて作った卵焼きとか、焦げてるし味付けも濃すぎてひどかったのに。

それこそ、自分で食べたら思わず顔をしかめてしまうくらいに。


それなのに、降谷さんは「美味しいよ、有難う」なんて言って……。




「……なんだ、どうかしたか？」

「え？」

「こっちじっと見てるから」

「いや……降谷さん、私の作った料理を不味いって言ったことないなって」

「……？美味しいからな」

「いや、今までで一度も。私の最初に作った卵焼きとか」




例に出して言ってみると、降谷さんは少し笑った。




「ああ、あれな」

「自分で食べたらすっごい不味かった」

「そりゃ、自分で食べたら不味いだろうな」

「あれは私じゃなくても、不味いっていうと思うけど」

「……そうじゃなくて」




降谷さんと話が噛み合わない。


私が訳がわからないという感情を表情に全面的に出すと、私の頭にポンと手を乗せて幸せそうに笑った。




「Aが、俺のために作ってくれたものだからな。俺への気持ちが入ってる料理が、不味いわけないだろ」




……こういうところ、すごくずるい。

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