及川さんの憧れの天才【男主・ハイキュー】

憧憬39 ページ41

帰りのバス、シン……と静まり返る車内。


結果から言うと、負けた。


トーナメント戦の一回戦で、負けた。敗北した。


チームの調子が悪かったわけじゃない。


レギュラーが欠けていたわけじゃない。


なら、なぜ勝てなかったのか。


理由は簡単だ。




「……俺たちが、弱かったんだね」

「A……」

「ごめん。もっと、俺がちゃんと……」




そこまで言うと、カシャンっと何かが落ちる音がした。


静まり返っていた車内に、それは大きく響いた。




「違う、Aのせいじゃない」

「むしろ……俺たちが足引っ張ってた」

「お前はいいところにボールをくれた。……活かしきれなかったのは、勝てなかったのは……俺たちのせいだ」




レギュラー陣が、口々にそう言った。


優ちゃんも、下を向いて唇を噛み締めている。




「みんな……」

「ごめんな。もっと俺たちが上手かったら、Aももっと楽なのに」




違う、そんなことない。


みんな100%の力を出しきれていた。


……それでも勝てなかった。


チームとしての強さが、俺たちには足りなかったんだ。




「……お前らは、よくやった」




誰もが暗い気持ちになっている時、監督がそう言った。




「力を出し切った。それでも勝てなかったのは、チームとして未完成だったからだ。悔しかったら、もっと強くなれ」




それ以降学校に着くまで、誰も言葉を発しなかった。


情けない。


キャプテンは俺だ。


みんなを、もっと上手くまとめないといけないのに。


みんなに、負けた責任を負わせてはいけないのに。


……気合を入れろ、気持ちを切り替えろ。


この敗北を、次に繋げろ。

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