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先ほどよりも長い時間の後差し出されたそれは、渡辺が想像していたものとまさしく同じものだった。
sk「しっせーしょー、…じゃあ阿部ちゃんは声が出せないってこと？」
佐久間は目を丸くさせ阿部の方を見た。
そう、彼は話すことができないのだ。
言葉を紡いで音にすることを断ち切られた青年は、また筆をとり書をしたためる。
"生まれた時から、今まで自分の声は知らない"
なんとも心苦しい言葉であったが、それを特別不幸と思わないのが彼ら2人、佐久間と渡辺である。
別にこれ以上こちらから深入りする必要はない。
本人が伝えたい時がくれば過去の話なり何なりとすれば良い。
そんなスタンスの2人なのだ。
だからこそお互い引き寄せ合ったのだが。
nb『だってよ佐久間、これで充分だろ』
自分の役目は終わったと言わんばかりに渡辺は佐久間にパスを投げ掛けた。
この先は佐久間自身で何とかできるはずだ。
そう考えた渡辺は少し口の端を引き上げた。
佐久間が考えていることはなんでもお見通しである。
sk「あの…さ、阿部ちゃん、」
目の前の2人が何を企んでいるのか到底皆目見当もつかない阿部は少し不安になるも、心のどこかで何かを期待している自分もいることに戸惑いを隠せなかった。
だがそんな阿部の逡巡は無駄であった。
sk「いままで俺はずっと翔太の足になってたんだけど…ほら、こう見えて身長差とかあるじゃん？」
nb「どっからどう見てもな」
sk「…？だからさ、これからは佐久間さんが阿部ちゃんの声の代わりするから、阿部ちゃんは翔太の足になってやってくんない？」
なんとも佐久間らしい誘い方だな、と渡辺は思った。
渡辺は佐久間の耳に、佐久間は阿部の声に、阿部は渡辺の足に。
みんなが誰かのために生き、誰かに力を借りながら生きていく。
こんな生き方も悪くはないのかもしれない。
こうなってしまえばまだ人生を諦めるのは早いと言われているようなものだと阿部は感じた。
目の前に差し出された佐久間の手を、彼は握るという選択肢以外知らなかった。
一瞬でもこの時彼らを訝しんだ自分を殴りつけてやりたいと、後に阿部は2人に語ることになる。
これが彼らの物語の始まりである。
＿＿＿＿
『エンドロールはまだ早い』 fin.
続く (更新停止中)
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みみずく。(プロフ) - コメント失礼します。よければ翔太くんメインの話が読みたいです。 (2021年1月4日 21時) (
レス) id: 23fb9957a6 (このIDを非表示/違反報告)
かき - コメント失礼します。難しいかもしれませんが、ぜひ黄色さんメインをお話も拝読したいです。よろしくお願いします！ (2020年12月22日 12時) (レス) id: edbdc5a7da (このIDを非表示/違反報告)
和 蓮 .(プロフ) - よければ蓮くんメインのお話が見たいです。 (2020年12月22日 7時) (レス) id: 888c904e00 (このIDを非表示/違反報告)
なお(プロフ) - コメント失礼します。桃さんメインのお話がみたいです。 (2020年12月21日 18時) (レス) id: f09ccc8f4c (このIDを非表示/違反報告)
おりょうり(プロフ) - ききさん» リクエストお願いします！舘様メインであべなべが看病するおがみたいです！内容は作者様におまかせします！ (2020年12月21日 17時) (レス) id: 809f062d73 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：きき | 作成日時：2020年6月13日 15時
