KyuHyunーI WISH 5

206．サランハムニダ ページ8

「Merci Mademoiselle.」


ドアの向こうには、何の変装もしていないキュヒョンがいた

ふわっとした髪の毛と、真っ直ぐな瞳、両端がきゅっと上がった唇ー

そして、白シャツの上に、紺色の編み込まれたニットを着ていた

綺麗な発音のフランス語でそう言うと、柔らかく微笑む

何、それ・・

カッコよすぎる

私なんて、歯磨きしたばかりで口紅もつけてないのに

バッチリ決まった彼の姿は、これから仕事なのかと思わせるほどだ


「おじゃまします」

ドアを開けて固まったままの私をよけて、キュヒョンはするりと部屋に入って来た

まぁ一応、着替えはしまったし・・
シーツはしわくちゃだけど、ベッドもなんとなく整えたから、大丈夫…


「何？見られたらまずいものでもあるの？」

挙動不審な私にいち早く気づき、キュヒョンは室内をキョロキョロと見回す

「そ、そんなのはないけど」
「ふ〜ん」
「会うのは午後からだと思ってたから、全然支度してなくて…」

私の言い訳を聞き終えると、おもむろに、整えてあったブランケットをふわりとめくった

「わっ！や、やめてよ、だめ！」
「…ふっ」
「もう、ダメだってば！」

やめようとしないキュヒョンのほうへ、慌てて手を伸ばす
すると、その手首をつかまれて、ぐいと引き寄せられた

その拍子に、ベッドに座ったキュヒョンの隣へ、ストンと腰を下ろす
急に近づいた距離に、どうしていいか分からず、俯いてしまう


「ヌナ、お願い。俺の目、見て」
「・・急に、何？」

彼が言いたいことは、分かっているのに
なぜか素直になれない

私は大人げなく、なんてことないフリをして、ちらりとキュヒョンを見上げた

そこには、真面目な表情のキュヒョンー


「Aヌナ、サランハムニダ…」


何も、答えられなかった

ただ驚いた顔をして、キュヒョンを見つめ返す

キュヒョンは、私の両手をひとつにして、その大きな手のひらで包んだ

数十センチの距離で、私の顔を覗き込む


「ヌナを傷つけたこと、心から謝ります。こんなことになって、本当に…後悔しています」

そう言われて、目の奥がじわりと熱くなるのを感じる
でも、視線は逸らせない

丁寧な言葉遣い

真剣な態度

そして、心からの謝罪


きれいな肌と美しい顔立ちで、たくさんの可愛い女の子たちからアプローチされているはずなのに

どうして私なんかを、一生懸命愛してくれるの？

それが・・・不安にさせるんだよ

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