Impatiens 4 (ページ10)

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side DY

｢いよいよ決心したんだ｣

おめでとうと紡いた彼女の表情は雲1つない澄みきった青空のよう

俺の葛藤を知っているA

そんな彼女に言葉を返せないのはその先に続く展開が怖いからだ

｢了解コンセプトの希望は？｣

｢え、受けてくれるの？｣

固まる俺に“ハードロックとかなら断るかも”と和ませるような反応をするAは優雅に献上品のチョコレートに手を伸ばした

美味しいと破顔した彼女はNCTの曲を作らない

綺麗な顔を緩ませる奴は未だに固まっている俺に“え、そうなの？”と期待を持たせる反応をする

提供した楽曲はOST含めチャート席巻

どこまでも圧倒的な才能を突きつけるやつは師であるDEEZヒョンの血に加え自身のオリジナリティーを持っている

そんな彼女へのオファーは舞い込むばかりだけど引き受けるのは気まぐれでほんの一握り

緊張で青ざめた顔をしていた俺に驚いていたのに今や2個目のチョコレートに手を伸ばしている

｢玉砕覚悟で来たんだけど…｣

｢断って欲しいの？｣

｢いや、Aは絶対にグループに関わる楽曲を作らないと思っていたから｣

｢そうだね｣

｢じゃあ何で…｣

｢ドヨンの歌声が好きだから｣

Aらしいシンプルな答え

だとしても頑固なAの意志を動かす理由にはならないはずでそんな言葉にも素直に喜びを噛みしめられない

｢本当にEvery day,Every MomentもEevent Horizonも羨ましかった｣

｢ドヨンは毎回熱く長々と私にも全世界にも語ってくれるよね｣

何故今まで頑なに携わらなかったバラードをポンと差し出し信じ難いクオリティのおまけまでつけるのか

いくらDEEZヒョンの頼みだからってあれほど透明度が高い世界を惜し気もなく曝すのかと思ってしまった

｢Aのプロデュース力もだけどあの世界観を表現できることを本当に尊敬している｣

｢ドヨンのソロデビューを誰1人として失敗だった微妙だったとか言わせない｣

ジャイアンみたいな台詞を紡がれるとは思わなかった

あのAが眼光鋭く“ドヨンの歌声を最大限輝かせられる曲を作る自信がある”と珍しく強気な姿勢を見せられて情報処理が追い付かない

｢Aが曲を作ってくれるの…？｣

｢どよちの頼みなら｣

｢イケメン過ぎて涙出てきた｣

嬉しさと感動と安心感と色んな感情が含まれた涙を流す俺にティッシュを差し出すAは小さく笑っている

“イリチルクユズの底力と結束力の見せ所だね”

俺には勇敢な親友がついている