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意味なんて、(モニカ×ティア。モニカ視点) ページ7

モニカは、ため息をつき本をぱたんと閉じた。

本をひっくり返し、表紙をぼんやりと眺める。

引っ込み思案な主人公が、努力を積んで片想いを成就させる、ありきたりなストーリー。

退屈だけれど、暖かくて素朴な物語だった。

きっと、大抵の読者は特別目立った感想は無く、良いお話だった、とこの本を閉じるのだろう。

だけど、モニカはそう思う事は出来なかった。

この物語の主人公は、恋を叶えようと努力していた。

努力できるだけの、その恋への期待があった。

純粋に、恋を楽しんでいた。

ボクは、この子のようにはなれないなぁ。

と、モニカは呟いた。

一人きりの自室で、周りに誰もいない事を信じて。

恋は、叶ったとしても叶わなかったとしても、自らを強くしてくれる経験だ。

それがきっと、大衆の意見なのだろう。

でも、自分はどうだろうか。

強くなどなれない。

むしろ、情を覚えてしまったせいで弱くなっている気すらする。

初めて。

恋をしたと自覚した時の気持ちは、淡くて甘くなどなかった。

重くて少し苦しい、息が詰まるような痛み。

夢の暗がりの中で、彼女の黒髪を見つけた時には、本気で混乱したものだ。

怖い、とも感じた。

ずっと、平坦で情熱とは無縁だった心に落とされた変化は。

少しずつ熱を持って、恋という名前をつけられた。

ーーーーアナタ、恋をしているの?

彼女の声が、耳元に響いた。

きっと彼女は、その恋心を向けられているのが自分だとは露程も思っていないのだろう。

普段の、自分の彼女に対する態度もそれに拍車をかけているように思う。

そう改めて自覚して、もう一度ため息をつく。

キミなんだけどなぁ。

呟く。

やっぱり、気づいてくれないなぁ……。

小さく、かすれた声は虚空に消え、誰にも気づかれる事は無く。

大好き、なんだけどな。

そう口に出してみると、熱い何かが喉元にせりあがってくるような感覚がして。

虚ろに伏せた蒼い目から零れた涙も。

誰にも気づかれず、少女の夜は更けていった。

迷信ってことくらい、知ってます。(エルナ×アネット。エルナ視点)→←キスしないと出られない部屋 後編



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設定タグ:スパイ教室 , 百合 , 二次創作   
作品ジャンル:恋愛
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亜月 - カレンさん» 読みましたよーーー!!!最後!!最後の挿絵、、、、 (2021年12月9日 11時) (レス) id: 1f8ff7c796 (このIDを非表示/違反報告)
カレン - pixivから飛んできました!めちゃくちゃ尊いです... ちなみに亜月さん6巻読みました...? (2021年11月24日 21時) (レス) id: aacf8bdcb4 (このIDを非表示/違反報告)
亜月 - おぉー!ありがとございます、、グレーテ×ティア読んできました! (2021年5月16日 15時) (レス) id: ae5d374ab3 (このIDを非表示/違反報告)
あも - 亜月さん» エルナとクラウス……!!ほんとうにかわいいです、なんかモチベになりました(あ) (2021年5月15日 15時) (レス) id: e2902b121b (このIDを非表示/違反報告)
亜月 - 遥世さん» あぁぁぁありがとう、、そうなんですよ、ジビアさんイケメンに書けるよう頑張りました! (2021年5月2日 21時) (レス) id: 9200735183 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜月 | 作成日時:2021年3月6日 20時

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