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雨音と、不器用な優しさ 続き ページ11

グレーテが、クラウスを見上げ微笑んだ。

「大丈夫です。折り畳み傘がありますので……」

傘を開く。クラウスは、当然の義務と言うように傘を受け取りグレーテの方へと傾けた。

傘は、相手より背が高い方が持つというのがセオリーだ。

持ちましょうか、というグレーテの申し出に、ありがとう、とクラウスは彼女に買い物袋を手渡す。

重くないかと少し心配になるが、グレーテは平気ですとばかりに肩をすくめてみせた。

「…………」

なるだけグレーテの方へと傘を傾ける。

傘の縁から零れた雫が、グレーテの頬を濡らさないよう、注意しながら。

「……あの、ボス」

グレーテが気を遣ったように声をかける。

だが、クラウスの態度はいつも通り素っ気ない。

「構わないよ。身体は丈夫に出来ているからな」

「…………」

彼の気遣いが、手に取るように分かってしまう。

グレーテの顔が濡れないよう、配慮してくれているのだ。

マスクは、水分に触れると剥がれやすくなってしまう。

リアルさを追及するあまりマスクの厚さはあまりにも薄い。

仲間にもバレない程に違和感が無い優秀な道具なのだが、やはり弱点の一つや二つ、あって当然だった。

グレーテが、申し訳無さげに俯く。

「お前が冷えてはいけないだろう」と、気休めにもならない誤魔化しの台詞が口をついて出た。

グレーテが気にしていたのは、その点だけでは無かったのだが。

「いえ、その……目に毒といいますか」

クラウスの肩は、雨に濡れ雫が滴っている。

服が薄く透け、クラウスの逞しく引き締まった腕のラインが露になっていた。

「何か言ったか?」

ぼそりと呟かれた言葉を聞き逃していたクラウスは、グレーテを見つめ問いかける。

曇りの無い目線に当てられたグレーテは、何となく罰が悪くなって、慌てて顔を背けた。

「……いえ、何でも……」

「そうか。ならいい」

二人の耳元で雨音が響く。

決して、この先も恋人として結ばれる事は無い関係。

だけれど、二人の間には、優しい安心感と、もう一つ。

特別な何かがあった。

その正体を、不器用な二人はまだ知らない。

君の影は(サラ×アネット。サラ視点)→←【番外編】雨音と、不器用な優しさ(クラウス×グレーテ。クラウス視点)



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設定タグ:スパイ教室 , 百合 , 二次創作   
作品ジャンル:恋愛
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亜月 - カレンさん» 読みましたよーーー!!!最後!!最後の挿絵、、、、 (2021年12月9日 11時) (レス) id: 1f8ff7c796 (このIDを非表示/違反報告)
カレン - pixivから飛んできました!めちゃくちゃ尊いです... ちなみに亜月さん6巻読みました...? (2021年11月24日 21時) (レス) id: aacf8bdcb4 (このIDを非表示/違反報告)
亜月 - おぉー!ありがとございます、、グレーテ×ティア読んできました! (2021年5月16日 15時) (レス) id: ae5d374ab3 (このIDを非表示/違反報告)
あも - 亜月さん» エルナとクラウス……!!ほんとうにかわいいです、なんかモチベになりました(あ) (2021年5月15日 15時) (レス) id: e2902b121b (このIDを非表示/違反報告)
亜月 - 遥世さん» あぁぁぁありがとう、、そうなんですよ、ジビアさんイケメンに書けるよう頑張りました! (2021年5月2日 21時) (レス) id: 9200735183 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:亜月 | 作成日時:2021年3月6日 20時

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