【キヨ】もう一度だけ…【あろまほっと】 (ページ4)

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8時15分。

後少しで彼女が来る。

そう思うと自然と支度をする手が早くなる。

少しでも怒ると彼女は彼譲りで怖いから。

…ーーﾋﾟﾝﾎﾟｰﾝ

うげぇ…来ちゃったよ…

歯ブラシを銜えたまま玄関のドアを開けると、目の前の彼女は形の綺麗な眉を顰めた。

「早くして」

『はひ…』

さっと口を濯ぎ、荷物を持つ。

戸締まりの確認をして、玄関で脚にサンダルを釣っかける。

玄関を出て鍵を閉めて、彼女に向き直り。

『おはよう、優香ちゃん。遅れてごめんね』

と言って笑えば、彼女は私の挨拶に答えることなく苦々しげに呟いた。

「ねぇ、A。兄さん…女連れて帰ってきたんだけど、どういうこと??」

…え…?

優香ちゃんの言葉に思考が止まる。

『…優佑さんとは、1週間前に終わったよ??』

「それは知ってるっつーの。帰ってくるにしては遅いし、女連れて来るには早すぎじゃね」

優香ちゃんはそう言ったけれど、まあいいや。と歩き始めた。

「行こっか。アンタ今日すっげぇ忙しいんだから」

おちゃらけるようにいたずらっぽく笑った優香ちゃんに、私も笑顔を作り、優香ちゃんの横に並んだ。

正直、忙しい方が助かる。

やることがあれば彼のことを、余計なことを考える時間がなくて済むから。

「今日天気いいな。昨日までの雨が嘘見ていじゃん。ってか、今日の夕方雨らしーけど、A持ってきたの??」

『持ってるよ。折りたたみ傘だけどね』

「いや、十分だし。ってかさすがAなんだけど」

そう言って優香ちゃんは綺麗に笑った。

雨の日の次の日は世界がキラキラ輝いていて、

太陽が道端に咲いた、薄ピンクの小さな花の小さな小さな花びらについた、ちっぽけな雫をキラキラと反射させていた。