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土「夏祭り?」
「はい、花子くんから先生も誘うようにと頼まれて」
仕方なく…と言いながらもどことなく楽しそうな瀬川。
本人は無自覚なんだろうが。
「聞いてます?」
土「はいはい。7日だろ?わーったわーった
仕方ねェから行ってやるって伝えておけ」
そう言ってパソコンに向き直ったのが一週間前
そして当日の今日
準備があると二番の境界の入り口で別れたあいつは
うっすらと化粧をし、浴衣を着て現れた
「…変じゃないですか?」
土「…まァ、孫にもなんとかだな」
そう言うと少し不満げに口を尖らせる
土(こういう所はまだまだ中学生だな)
転入してきた頃と比べりァ、
表情も豊かになってきたが
源以外のクラスメートと話している所は
見たことがねェから馴染めてはねェんだろうけど
土(ま、これでも進歩だな。それに…)
「寧々先輩、カステラ食べますか?」
寧「ありがとうAちゃん!
じゃあ、私もかき氷一口あげるね!」
土(なんだかんだ八代達の前ではよく笑うしなァ)
「…?なんですか?さっきからジロジロ見て…」
土「なんでもねェよ、楽しそうで何よりだ」
「なんですか?それ」
しばらくして源と八代が
屋台の短冊を集めると言い出したが
瀬川は早々に手持ちの短冊を吊るすと大笹竹へ向かうらしく
ついて行くことにした。
瀬川本人は子供扱いされていると感じたのか
嫌がっていたが、初めてくる場所、
ましてや怪異達の祭りで迷子にでもなったら大事になる。
しかも、祭りも終盤ということもあり
周りの怪異の数が増えている。
そう思った矢先、瀬川が向こうからくる怪異にぶつかった。
土「大丈夫か?」
「はい、なんか増えてきましたね」
土「そろそろ祭りも終わるからだろ…ほら」
「…え?な、なんですか?」
迷わないようにと伸ばした手に少したじろぐ瀬川。
土「はぐれちまったら、ついてきた意味がないだろ
嫌なら裾でもいい、掴んどけ」
そういうと少し考えてから
遠慮しながら手を重ねてくる瀬川に内心驚きつつ
大笹竹へ向かって歩き出す。
「…ありがとうございます…」
背中から聞こえた小さな声に少し口元が緩んだのは
ここだけの話だ。
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あまね(プロフ) - なんかもうあいしてる (5月22日 17時) (レス) @page14 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ほまれ | 作成日時:2022年1月19日 23時