今日:14 hit、昨日:8 hit、合計:45,785 hit
小｜中｜大
38 ページ38
俺から距離を取ったAは、
目線を下に落としたまま、言葉をつづけた。
『私は、この結婚をするって決めたの。』
「どうしてそこまでしてこの結婚にこだわるんだよ？」
『...もう疲れちゃった。』
「疲れたって...」
『パパの顔色伺うの。でもこの結婚をしたら、それがもう無くなるから...』
この言葉は、俺の心を痛める。
Aの過去も知ってるからこそ...彼女の気持ちが痛いくらいに分かる。
でも、無理だよ...
「俺は嫌だ。俺の一番好きな人がっ、」
『紫耀は私の弟なの..お姉ちゃんの私にそんな感情持っちゃダメ。』
(何だよ...それ。)
ズルいよ...
なんで俺の気持ち知ってからも突き放すんだよ...
＜ガチャ。＞
突然、玄関の開く音がする。
『優太さん、帰って来たから。』
「だから、何。」
『こんなとこ見られたらっ、』
「別にいいだろ、いっそのこと」
俺はまるでガキのように、自分の欲望のままAの腕を掴む。
そんな俺とは反対に、
冷静な口調で、諭すように
「お願い。」といい
Aは俺に手を放すように目で懇願した。
自分では大人になっていたつもりでも、
結局、俺は自分の欲望が抑えきれないガキのままだったことを思い知らされた。
俺はAから静かに離れ、
そのまま出口へと向かった。
(クソ...)
廊下で、帰宅した優太さんに会う。
優太「あ！紫耀くん、来てたの！...？？？」
一回しか会ったことないけど、
律儀なのも、人が好いのも、もう分かる。
でも今日はそれがより一層、腹立たしく感じた。
俺はガキだから...
声をせっかくかけてくれた優太さんに対して
何も言わずに、無言で通り過ぎ、そのまま出て行った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：秋風 | 作成日時：2020年7月9日 3時
