記、いつものこと。 ページ29
ゼロになった距離はすぐに離れて、熱い吐息が唇をくすぐった。
ほんの一瞬のことだったのに、私は動けない。
…ファースト、キス。
幸「…ふふ」
仄かに微笑む精市の顔が、いやに眩しい。
くいっと引かれる顎、再び重なる唇。
この吐息は一体どちらのものだろう。
何故かそんなことを考える切れ切れの思考。
唇を介して互いの熱が混ざり合う。
…ってなんか恥ずかしいこと考えてる気がする。
そんな思考を蹴飛ばしたのは、
貴「！ ……！ ぷはっ！！」
精市の胸を何度もたたいて、放してもらう。
驚いた精市が、
幸「どうしたんだい？」
貴「し、…死ぬかと思った……！」
呼吸困難でした、ええ。
窒息寸前だったわ、あぶねー。
幸「息止めてたのかい？ まったく…」
貴「ごめ、だっ、て、ど、すりゃいいか、わかんな、いし」
私の台詞がぶつ切りなのは、まあお察しの通りむせ返ってるからで。
そんな私の背中を精市が呆れ顔でさすってくれるのも、なんだか久しぶりな気がする。
幸「だからって息しなかったら死ぬよ？」
貴「思い知った。それはもうしっかりと。酸素って生命活動に必要不可欠なんだね」
ぜえはあと肩で息をしながら、足りない酸素を脳に行き渡らせる。
幸「…でもまあ、Aのファーストキスを貰えて、嬉しかったよ」
貴「げほっ……！！」
私、言ったっけ！？ そんなこと言ったっけ！？
…うん、脳に酸素が回ってなかった時の記憶がないから正直自信ないな。
幸「もー、なんでそこでむせるかなあ」
けらけら笑いながらも、背中を撫でてくれる精市。
…ほんっと、性悪なんだか優しいんだかよくわからない奴……。
幸「でも、ほんとAって色気ないよね、キスで窒息しかけるってさ」
貴「やかましい」
ついさっきまでの甘い空気はどこへやら、いつも通りの軽口の叩き合い。
どちらともなく足を進め、帰路を辿る。
貴「でもそんな私が好きなんでしょー」
やけっぱちで、ともすれば自虐になりそうな台詞。これ、どんなナルシスト発言だよ私。
幸「…そうだよ？」
うわちょっと待って真顔やめて真顔。
貴「…今日のところは負けを認めてやる」
幸「ありがたき幸せ。…あはは、A、顔真っ赤」
完全に自分で掘った墓穴に自分で飛び込んだ形になりました。
せめてもの仕返しに、おどけて笑う精市の背中を無言で軽くはたいてやった。
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かるぴん(プロフ) - とても面白くて一気読みしました！ (2021年3月15日 2時) (
レス) id: e2b715c702 (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - デカ奈さん» わああありがとうございます！！ 作者の都合で更新ガタ落ちしてすみません！！ 幸村君！ もっとがんばって！！！( (2015年3月19日 7時) (レス) id: f85a5f48fd (このIDを非表示/違反報告)
デカ奈(プロフ) - ゆっきーに……ゆっきーに……！ああ…！！←面白すぎて二度読みしました。そしてなんと言ってもゆっきーが……ああ…！！←1日過ぎちゃいましたけど、誕生日おめでとう！椿さんこれからも楽しみにしてます！ (2015年3月6日 3時) (レス) id: 6e91fdd91f (このIDを非表示/違反報告)
椿(プロフ) - ミッキーさん» 今後も幸村君にベタベタに甘やかされていくのではないかと…思います(私の精神がもつかぎり) 今後もよろしくお願いします！ (2015年2月15日 11時) (レス) id: f85a5f48fd (このIDを非表示/違反報告)
ミッキー - 幸村君に愛され過ぎて夢主が羨ましすぎます！あぁ入れ替わりたぃ (2015年2月1日 16時) (レス) id: 60f2124a2e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：椿 | 作成日時：2014年11月17日 19時
