友と、かるたと、青春と。 (ページ29)

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離れ離れ無し全員連れてくページ29

平side

紫耀は俺らのエース。勝負はこれからや！と廉は心の中で叫んだ。

会場へ着いて、廉はびっくり。そこにいるのは、普段の最強のエースではなかったからだ。

大きく差をつけられた紫耀は汗をかき、肩で息をしていた。

次々と札を取られる紫耀。(苦しい…。俺、今までどうやってかるた取ってたんだっけ？思い出せない…！)と紫耀はぐるぐる考えていた。

相手のHiHi高校は「流れこっちに来てるよ」と声を掛け合っている。

「なにしおわばー」と読まれた時、紫耀の方に沢山の札が飛んできた。

「ハデに飛ばしたな〜」
「ヤケになったんじゃね？」と周りの観客が話すのが聞こえる。

「失礼。」と飛んできた札を取りに来たのは、ジンだ。

「紫耀、深呼吸しろ。そしたら、周りが見えてくるから。」

深呼吸…？ジン。分かった、やってみるよ。

戻る時にジンは岸くんに「まずは岸くんが勝って。そうすれば、紫耀や俺らが楽になる。」と声をかけた。

「今、一番調子いいよ。海人、勝てるよ。」とジンは海人の肩を叩いた。

すぅーっと深呼吸をした紫耀は周りを見渡した。

あ…俺の対戦相手の瑞稀。あんなに汗かいてたんだ。

俺が8枚で、相手の瑞稀が2枚…大分やられたなぁ…。

顔を上げると、観客の中に廉がいて、廉とバチっと目が合った。

いつもは恥ずかしくて目を逸らすけど、今は逸らせなかった。廉、ごめんね。でも、俺は廉と一緒にかるたで戦いたい…！

相手に向き直った紫耀の目つきがガラッと変わった。

「かくとだに」の「か」が読まれた時…

バシッ！と紫耀が今までにない速さで札を取った。「えっ！？」と相手の瑞稀も驚いている。

そこから急激に自分を取り戻した紫耀は、どんどん良くなった。6枚差がひっくり返ったのだ。

紫耀が顔を上げて、また廉と目が合った時。廉はハッとして「紫耀、頑張れー！！」と会場全体に聞こえるくらいに大声で叫んだ。

廉は、周りからびっくりした目でジロジロと見られた。「あっ…！すんません…」と顔を赤らめる廉を見て紫耀は微笑んだ。

ありがとう、廉。頑張るね。

「なにしおわばー」と読まれ、紫耀が最後の札を抜く。
「あっ…！」と瑞稀は悔しそうな顔をした。
「よっしゃ！」と廉は小声でガッツポーズをした。
　

「キンプリ高校3勝、HiHi 高校2勝でキンプリ高校の勝ち！」と主催者が発表。
　

「ありがとうございましたー。」と相手チームに礼をしてすぐに海人は廉を見つけた。