あの日と同じ ページ44
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「あ…」
スニョンの帰りを待つための図書室で、カウンターに座ってるウォヌくんを見つけた。
ちょうど、ウォヌくんと初めてちゃんと会話したあの時みたいに。
「ウォヌくん、」
「あぁ、A。スニョン待ち?」
「え、あ、うん」
夏休みが終わってから、ウォヌくんと話すのは久しぶりだった。
何か、伝えなくちゃ、と思うのに、口がうまく動かない。
「あ、あのね、ウォヌくん」
そんな私の様子を見て、ウォヌくんがカウンターの椅子から立ち上がって、外に出てくる。
「A、奥で話そう」
「あ、だって、カウンターは」
「本借りにくるやつなんて誰もいないし」
本来座ってる奴ももうすぐで戻るし、と、言われるがまま奥の席まで誘導される。
すとん、と座った場所は、これまたウォヌくんとスニョンのことについて最初に言葉を交わしたテーブルで、言いようのない既視感に襲われた。
「あっ、えっと、あのね、ウォヌくん」
「知ってる、スニョンのことだろ」
「え?」
「本人から聞いた」
「…………そう」
何をスニョンが言ったのか、気になったけれど、それは私が聞くべきことじゃない。
2人にしか分からないこともある。
目の前にいるウォヌくんに対して申し訳なく思ってしまう気持ちも、所詮私のエゴでしかなくて、だけど、何かを伝えたくて、何度も口を開いては閉じて、を繰り返した。
「ウォヌくん、あの…」
「別に、悪いなんて思わないでいいから」
「え…」
「Aが悪く思うことなんて一つもない。俺がAを好きで、Aはスニョンを好きだった、ただ、それだけ」
…あ、どうしよう。
泣いてしまいそう。
だけど、ここで泣いてしまってはいけない、と必死で堪えた。
「…良かったな、A」
ウォヌくんの手のひらが私の頭の上に乗る。
よく知ってる、優しい手のひら。
「じゃあ、帰るわ」
「っ、ウォヌくん、……また、明日ね」
「また明日」
微笑んで手を振ったウォヌくんが見えなくなった後、テーブルに水滴がぱたぱたと落ちた。
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sani(プロフ) - ぴっこりーのじみーさん» コメントありがとうございます(*^^*)ウォヌにドキドキしていただけて嬉しいです!私も書いてるあいだ、とても迷いました( ; ; )読んでくださりありがとうございました! (2020年12月12日 8時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
ぴっこりーのじみー(プロフ) - だめだ、、、スニョンの話なのに推しのウォヌにドキドキしてしまう。あー、感情が。何とも言えない(´・ω・`)w (2020年12月9日 5時) (レス) id: 67de14ac92 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - ひなのさん» ありがとうございます!そのお言葉がとっても嬉しいです(*^^*)最後まで読んでいただきありがとうございました( ; ; ) (2020年10月26日 20時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
ひなの(プロフ) - 素敵すぎてもーきゅんきゅんが止まらなかったですTT涙出ちゃいました!! (2020年10月25日 21時) (レス) id: ede454b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - オタクさん» コメントありがとうございます!Happy Endingリリースの発表の前に完結したお話なのですが、そのように言っていただけて本当に嬉しいです(*^^*)そして身に余るお言葉ばかり…ありがとうございます( ; ; )最後まで読んでいただき、ありがとうございました! (2020年8月7日 20時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sani | 作成日時:2018年9月10日 20時