残されたのは ページ40
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時間は、どんな人にも平等にやってくるはずなのに、ここだけ、ゆっくり時間が流れてるみたいだった。
ウォヌくんはさっきから一言も発さないまま。
だけど、握られたその手から全てが伝わるような気がした。
静かな図書館に、スニーカーの擦れる足音が響く。
その足音の方に、ふと顔を向ける。
「あ…」
思わず声が出た私に反応して、ウォヌくんも顔を上げた。
「スニョン、」
キョロキョロと何かを探すスニョンの名前を小さな声で呟く。
聞こえるはずない。
結構な距離があいているし、すごく小さな声だったから。
それでもスニョンは何かに気が付いたようにこちらを見て、私たちの方に向かってきた。
「あ、おま、あっ……」
ぴたりと足を止めたスニョンの視線は、私たちの手元に注がれている。
「何?」
ウォヌくんはその視線を気に留める様子もなく、スニョンに問いかけた。
「そっ、その手を離せ!」
「なんで?」
「なんで…?!なんでって」
スニョンと一瞬、
目が、合う。
すぐに逸らされたその目は、何秒か伏せられた後、また私の方を向いた。
強い瞳。
「A!」
「え、は、はい」
「俺、分かった!」
「…えっと?」
スニョンが大きな声を出したせいで、周りの人が何事かと好奇の目を向けてくるのが分かる。
「俺、お前のことが好きなんだわ!」
「……は、」
ふ、と手に感じていた重みが消える。
ガタリ、という音とともに、ウォヌくんが立ち上がった。
「バカなの?外でやれよ」
ウォヌくんが遠ざかっていく。
「あっ」と間抜けな声を出しているスニョンと、息がうまく出来ない私だけがそこに残った。
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sani(プロフ) - ぴっこりーのじみーさん» コメントありがとうございます(*^^*)ウォヌにドキドキしていただけて嬉しいです!私も書いてるあいだ、とても迷いました( ; ; )読んでくださりありがとうございました! (2020年12月12日 8時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
ぴっこりーのじみー(プロフ) - だめだ、、、スニョンの話なのに推しのウォヌにドキドキしてしまう。あー、感情が。何とも言えない(´・ω・`)w (2020年12月9日 5時) (レス) id: 67de14ac92 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - ひなのさん» ありがとうございます!そのお言葉がとっても嬉しいです(*^^*)最後まで読んでいただきありがとうございました( ; ; ) (2020年10月26日 20時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
ひなの(プロフ) - 素敵すぎてもーきゅんきゅんが止まらなかったですTT涙出ちゃいました!! (2020年10月25日 21時) (レス) id: ede454b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - オタクさん» コメントありがとうございます!Happy Endingリリースの発表の前に完結したお話なのですが、そのように言っていただけて本当に嬉しいです(*^^*)そして身に余るお言葉ばかり…ありがとうございます( ; ; )最後まで読んでいただき、ありがとうございました! (2020年8月7日 20時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sani | 作成日時:2018年9月10日 20時