振り向いた先 ページ36
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スニョンが走ると、細い髪の毛がふわりと宙に浮いて揺れる。
私はその光景を見るのが好きだった。
今まさにその人が、スニョンが、私たちに向かって走ってきている。
えっ、と声にならない声を発していると、右手を掴んだままのウォヌくんが、その手を引いた。
「う、わっ」
バランス感覚を失った身体が、ウォヌくんの胸の中に入る。
触れたところからウォヌくんの体温が伝わってきて、顔に熱が集まった。
だけど、それは一瞬で。
スニョンが近くまで来たのを感じたのと同時にスニョンが勢いよく2人を両手で引き剥がした。
ウォヌくんの手と身体が離れる。
「あ、」と声を上げたときには、スニョンが私の左手を掴んで走り出していた。
状況を理解できないまま後ろを向く。
私の目に、どんどん小さくなっていくウォヌくんの姿が映った。
..
足が、もつれる。
「ちょ、ちょっと!ま、って…」
なんなの。
繋がれた私の左手とスニョンの右手。
小さい頃は良く繋いでいたその手は、なんだか知らない人のものみたいだった。
「…ス、スニョン!」
緩まない速度に、ぐっ、と力を入れて、その手を思い切り振りほどく。
「あ…」
やっと立ち止まったスニョンが、私の方を振り向いた。
上がった息を整えるために何度か深呼吸を繰り返す。
キッと目線を上げた私に、スニョンがたじろぐように少し後ずさった。
「…なんで……?」
「え?」
「なんでこんなことするの!スニョン!私、スニョンに振られたんだけど?!」
なんだかモヤモヤして、イライラして、どうしようもない気持ちをスニョンにぶつける。
「そ…そうだよ。分かってるよ」
スニョンが「あー」と髪の毛を荒くかいた。
「けど!嫌なんだよ!なんか…ウォヌと仲良くしてるA見るのが、」
「それは前にも聞いた!でもそれは"幼馴染として"でしょう?ただ私の1番が自分でなくなるのが嫌なだけなんでしょ?!どうして、こんな勝手なことばかりするの?」
「違う!あ、いや違わないけど!……あー、くそ」
スニョンが顔を伏せて、くるりと方向転換をした。
「………わけわかんね、帰る」
「は、…え」
走り去る、スニョンの背中を目で追う。
訳が分からないのはこっちだよ。
なんなの、スニョン、
ねえ。
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sani(プロフ) - ぴっこりーのじみーさん» コメントありがとうございます(*^^*)ウォヌにドキドキしていただけて嬉しいです!私も書いてるあいだ、とても迷いました( ; ; )読んでくださりありがとうございました! (2020年12月12日 8時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
ぴっこりーのじみー(プロフ) - だめだ、、、スニョンの話なのに推しのウォヌにドキドキしてしまう。あー、感情が。何とも言えない(´・ω・`)w (2020年12月9日 5時) (レス) id: 67de14ac92 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - ひなのさん» ありがとうございます!そのお言葉がとっても嬉しいです(*^^*)最後まで読んでいただきありがとうございました( ; ; ) (2020年10月26日 20時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
ひなの(プロフ) - 素敵すぎてもーきゅんきゅんが止まらなかったですTT涙出ちゃいました!! (2020年10月25日 21時) (レス) id: ede454b4f6 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - オタクさん» コメントありがとうございます!Happy Endingリリースの発表の前に完結したお話なのですが、そのように言っていただけて本当に嬉しいです(*^^*)そして身に余るお言葉ばかり…ありがとうございます( ; ; )最後まで読んでいただき、ありがとうございました! (2020年8月7日 20時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sani | 作成日時:2018年9月10日 20時