あの日の私と ページ17
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シャワーの蛇口をひねると、勢いよく床に打ちつけられた水滴が私の足元を濡らす。
それを見ながら、ぼーっとさっきのしおりのことを思い返した。
あれをくれたあの人は、今どこでなにをしているんだろう。
もう知る由もないけど。
『A』
シャワーの音に混ざって、あの日の私を呼ぶ声がする。
父の仕事の関係で幼い頃からひとつのところに留まることがなかった私の存在は、あの場所で異端だった。
だけど、あの日。
___
『Aって、本が好きなの?』
『え?』
『いつも、本読んでるから』
『…嫌なこと、全部忘れて本の中に隠れることが出来るからね』
『うーん、良く分かんないけど、これあげるよ』
『しおり?いいの?』
『うん、学校で貰ったんだけどいらないから』
『…ありがとう』
.
..
ただ、それだけ。
それだけだけど、私の心を救うのには十分だった。
そこに居てもいいのだと、認められた気がした。
それから、どうにかして彼に嫌われないように、いつも顔色を伺いながら毎日を過ごした。
もう寂しさを感じないで済むように。
彼が私から離れてしまわないように。
彼と離れたら、多分生きていけないような気がしてた。
そう言うと、そんなのありえないよ、って笑った彼の顔を思い出す。
本当、その通り。
現にこうやって、ピンピンしてる。
それどころか、まぁまぁ楽しく生きている。
自嘲気味に笑って、シャワーを止めた。
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sani(プロフ) - 鹿きつねさん» 共感ありがとうございます( ; ; )あたたかいお言葉、とても嬉しいです!読んでくださりありがとうございます!また何か書いてしまうと思うので、そのときはお暇なときにでも読んでいただければ幸いです(*^^*) (2018年8月12日 1時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿きつね(プロフ) - 完結ありがとうございます!お疲れ様でした。推しの他に神の存在がいるのすごく共感します^ ^とても素敵で面白かったです…またいつかよろしくお願いします! (2018年8月11日 23時) (レス) id: 0bf67ee9d6 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - いかさん» ありがとうございます( ; ; )コメントいただけて嬉しかったです(*^^*)サイコーと言っていただけて震えてます( ; ; ) (2018年8月11日 23時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - テヨンさん» コメントありがとうございます( ; ; )さいっこうに嬉しいです!本当にありがとうございます!! (2018年8月11日 23時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - 沙羅さん» いやむしろ沙羅さん本当にいつもありがとうございます( ; ; )まじで好きです( ; ; )やー、もう優しすぎますありがとうございます!! (2018年8月11日 23時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sani | 作成日時:2018年7月20日 18時