知らない世界 ページ12
.
「美味しい…」
目の前に並んだおつまみを口に入れて驚く。
これを作った人の方を見ると、得意げに笑った。
結局、自分への暗示は失敗に終わってまたこのミンギュという男と一緒の時間を過ごしてる。
…なんでこの人、こんな何でも出来ちゃうの？
芸能人なんだよね？
こんなのってアリなの？
「もしかしてあれなのかな？こう、家事が得意ってことでテレビ出てる人なのかな？」
背も高いし、イケメンだし、勝手に頭の中でモデルさんなのだと位置付けてきたけど、どうにも違うんじゃないかと思えてきた。
「いや？アイドルです」
「アイ…？」
聞こえてきた言葉は私の予測の範疇を飛び抜けてて、脳の処理がなかなか追いつかない。
アイドル…
…え？！アイドル？！
「ア、アイドルってあれ？あれかな？あの、歌って踊ってキラキラクルリンのあれかな？」
「ん？Aヌナの例えがよく分かんないけど、まぁそうです！」
「まじ…」
ああ…今どきのアイドルは家事全般できるように訓練されてるのかな？
トップアイドルになるために料理教室にでも通わされてるのかな？
きっと、ダンスや歌の練習もあるだろうに…時間を縫って…
考えただけでも震える。
「…大変な世界だね」
憐れみを込めた目をミンギュに向けて呟くと、彼は笑ったまま「え？」と首を傾げた。
「Aヌナ、俺に興味持ってくれたんですね！」
立ちっぱなしだったミンギュが小走りで近づいてきて、私の隣に腰を下ろす。
前のときも思ったけど、この男、人との距離が近い。
近くで見るその目は嬉しそうに輝いていて、どことなく既視感を覚えた。
「いや、全然」
「ええ？！」
しゅん、と項垂れる彼を見て、あ！と思う。
思わず手のひらを上にしてミンギュの前に差し出した。
「えっ？なに？」
戸惑いながらも、私の手の上に自分の手を重ねる彼。
あ、やっぱり。
昔飼ってたゴールデンレトリバーに似てるんだ。
お手状態のミンギュは少し黙って、重なった手を見つめてる。
「ヌナの手は冷たいですね」
そう言ったと思ったら、手のひらに感じる体温が少し変化した。
重ねた手をぎゅっと握って、そのまま自然な流れで指を絡めてくる。
「おいコラ」
だから、すごい勢いで自分の手を動かして、その手を振り払った。
ミンギュは「あーあ」とこぼして、また立ち上がった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1103人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sani(プロフ) - 鹿きつねさん» 共感ありがとうございます（ ; ; ）あたたかいお言葉、とても嬉しいです！読んでくださりありがとうございます！また何か書いてしまうと思うので、そのときはお暇なときにでも読んでいただければ幸いです(*^^*) (2018年8月12日 1時) (
レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
鹿きつね(プロフ) - 完結ありがとうございます！お疲れ様でした。推しの他に神の存在がいるのすごく共感します^ ^とても素敵で面白かったです…またいつかよろしくお願いします！ (2018年8月11日 23時) (レス) id: 0bf67ee9d6 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - いかさん» ありがとうございます（ ; ; ）コメントいただけて嬉しかったです(*^^*)サイコーと言っていただけて震えてます（ ; ; ） (2018年8月11日 23時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - テヨンさん» コメントありがとうございます（ ; ; ）さいっこうに嬉しいです！本当にありがとうございます！！ (2018年8月11日 23時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - 沙羅さん» いやむしろ沙羅さん本当にいつもありがとうございます（ ; ; ）まじで好きです（ ; ; ）やー、もう優しすぎますありがとうございます！！ (2018年8月11日 23時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sani
| 作成日時：2018年7月20日 18時
