期待するのは ページ31
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「A、ここでレフ板おさえてて」
「はい!」
暑い。
舞い上がる砂埃に、乾いた空気。
私の背中に汗が流れる。
私は今、砂漠のど真ん中にいる。
撮影は刺激的で一日一日がとても充実してる。
知らない世界、いろんな人々。
情報量が多いからとても長く感じるのに、振り返るとあっという間。
「うーん、ここのカットは夕日がバックに欲しいんだよなぁ」
監督が呟く。
砂埃に邪魔されてキレイな夕日が映らない。
「スケジュールの関係もありますし、このまま強行しては?」
私よりも遥かに経験豊富な先輩アシスタントが監督に言った。
…その発言を、どうしても無視できない。
悪い癖だって、分かってるのに。
「いや!でも、絶対にここのカットは完璧な夕日があってこそです!明日まで待ってみませんか?」
「A!またお前は!」
「だって!絶対そのほうが私たちが求めてる映像になります!」
「お前なぁ!」
私の性格のせいで、こうやっていつも叱られてばかり。
監督が口を開いた。
「そうだな、明日まで待ってみるか。今日はここまでにしよう」
「ありがとうございます!」
勿論いつもこんなに物事がうまく運ぶわけではない。
隣で先輩が舌打ちをした。
「またかよ」
ああ、始まった。
食事の準備をしながら、ぶつぶつと小言を言われる。
「お前はいつもそうやって口答えばかり!スケジュールのこともちょっとは考えろ!」
先輩の言うことも分かる。
ここにいる人たちはみんな真剣で、みんなクライアントの要望に応えるために日々動いてる。
「だけど、より完璧で美しいものを撮りたいじゃないですか!」
だからこそ、私にだって譲れないものがある。
はぁ、と先輩がため息をつく。
私も鉄の心を持ってるわけじゃない。
心が折れそうになってしまうときだってある。
今日みたいに誰かとぶつかってしまった日は、特に。
みんなと少し離れて砂漠の空を見上げた。
こんな日は、話を聞いてもらいたくなる。
「おい、A」
さっきの先輩が私を呼んだ。
「電話」
「え?誰からですか?」
「さあ。長電話するなよ」
辺鄙なところでの撮影が多いから、アシスタント内でひとつの衛星電話を持ってきている。
この番号を知ってるのは、両親と…
あと、ジフナくらいなんだけど。
少しの期待を胸に、受話器を耳に当てた。
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sani(プロフ) - ミヌさん» わあ、ありがとうございます( ; ; )嬉しいです!読んでくださり、ありがとうございました!! (2021年4月9日 6時) (レス) id: a75bf160ab (このIDを非表示/違反報告)
ミヌ(プロフ) - 感動しましたTT大好きです。 (2021年4月9日 4時) (レス) id: 8612cef835 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - まろにゅきさん» うわぁ〜なんて嬉しいお言葉!!ありがとうございます( ; ; )とっても嬉しいです!ああすれば良かったこうすれば良かった、と今になって思ったりもしますが、そう言っていただけて本当に良かったです(*^^*) (2020年6月25日 0時) (レス) id: e36f83df04 (このIDを非表示/違反報告)
まろにゅき(プロフ) - saniさんの小説はスッと入り込めて読みやすくて、綴られる言葉もすごく好きです(^^)私はスンチョルもウジくんも好きだからこのお話、ドキドキしました! (2020年6月24日 18時) (携帯から) (レス) id: 36bf00294b (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - ゆずさん» こコメントありがとうございます!文庫本無限とは!このお話は私なりに書くの楽しかったので、すごく嬉しいです(*^^*) (2018年9月30日 7時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:sani | 作成日時:2018年6月22日 19時