背中を押すのは ページ12
.
自販機で水を買う。
ペットボトルが落下する重みのある音が人気のない廊下に響いた。
冷たい水に触れて、熱かった右手が冷やされていく。
「…帰ろう」
誰に言うでもない言葉を呟いた。
DN「Aヌナ？！」
自販機から離れようとしたところ、後ろからチャニの声が降ってきた。
「あー、なんか今日はよく遭遇する日だなー」
DN「えっ？どういうことですか？え、ていうか、歓迎会は？！」
チャニが駆け寄ってくる。
「あれ、ジョンハニオッパから聞かなかったの？」
DN「…え？ヒョン？あ、いや、何も」
「そうなんだ、さっき会ったのに。歓迎会終わって、少しだけ酔いを覚ますために事務所に寄ったの」
DN「ああ…」
目の前のチャニが凄く複雑な顔をする。
「チャナ」
何よ、私、なんか変なこと言った？
「すごい変な顔してるよ」
DN「ああ！失礼な人だな！」
いつものチャニ。
うん、その方が良い。
DN「…で、どうでした、歓迎会は」
「ああ、楽しかったよ」
DN「誰かに誘われたりはしませんでした？」
「んー…」
DN「あ？！また！人を騙したな！」
目を吊り上げるチャニに人聞きが悪いなぁ、と笑った。
「大丈夫だよ。ありがたいけど、いつもチャニに心配されるような私じゃないからね？」
少しだけ、チャニが瞳を伏せた。
DN「…じゃあ、ずっと、帽子かぶってマスクしてメガネしててください」
「はあ？」
DN「そしたらちょっとは安心できるかもしれません」
ぼそりと呟く声が耳に届く。
「なんで、そんなこと」
伏せていたチャニの瞳が少しだけ揺れて、私の方を見た。
DN「それが出来ないんだったら、心配くらいしてもいいじゃないですか」
あまりにその瞳が真っ直ぐ私を捉えるから動揺してしまう。
「…心配って認めてるじゃん」
DN「あっ！」
チャニが口を手で覆う。
「じゃあ、帰るね」
DN「あっ、ヌナ」
「なに」
DN「…気をつけてください」
「はーい、タクシーで帰ります」
ひらひらと手を振る。
後ろから感じる視線が、家へ向かう私の背中を押してくれているようだった。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1083人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「SEVENTEEN」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
sani(プロフ) - blueheart_825さん» わぁ（ ; ; ）素敵な話だなんて嬉しいです！コメントありがとうございます！！ (2018年10月7日 23時) (
レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
blueheart_825(プロフ) - 素敵な話しすぎて心が浄化されました･:*+.\(( °ω° ))/.:+ (2018年10月7日 21時) (レス) id: 908e388155 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - いかさん» コメントありがとうございます！とっても嬉しいです（ ; ; ）今書いているお話を頑張る力にもなります！ありがとうございます(*^^*) (2018年7月25日 17時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
いか - とても素敵なお話ですね。次回も楽しみにしています！応援してます(>_<) (2018年7月25日 17時) (レス) id: 599fdc1650 (このIDを非表示/違反報告)
sani(プロフ) - はるさん» わぁ（；＿；）コメントありがとうございます！嬉しいです！！こちらこそ読んでくださりありがとうございました(*^^*)とても力になります。今書いているお話も頑張ります！ (2018年7月8日 18時) (レス) id: f23e3c8ef3 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：sani
| 作成日時：2018年5月7日 16時
