向かい合わせ 1 ページ44
.
気まずい空気が流れる。
作業室でジフナと2人きりの空間。
「今日、忙しかったでしょう?今日はそのまま帰っても良かったのに」
張り詰めた空気をどうにかしたくて、つとめて笑顔で話す。
これで、昨日の出来事が消えるわけではないけれど。
WZ「あー……ちょっとだけ、気になることがあって」
「うん?どこ?」
WZ「…昨日」
「昨日話してた曲について?まだどっか気になる?」
楽譜をめくりながら、答える。
WZ「…ヌナのこと」
バサ、
私を見つめるジフナの目が、昨日のことを鮮明に呼び起こさせて、思わず持っていた楽譜を落としてしまう。
「…あ、ごめん」
散らばった紙たちを拾うためにしゃがみ込むと、ジフナもゆっくりと椅子から降りる気配がした。
私の目の前にしゃがみ込むジフナ。
あぁ、拾うの手伝ってくれるのかな、なんて思っていたら、突然手を重ねられる。
「うっわ!」
色気も何もない声。
WZ「なにそれ」
ジフナが肩を揺らして笑う。
情けない…こんな動揺してしまうなんて。
いけない、こんなの私らしくない。
咳払いをしてジフナの方を向くと、今度はジフナが目をそらした。
「ああー…昨日はいきなり帰っちゃってごめん」
WZ「はい」
「あのさ、言える言葉はひとつしかないんだよ」
私達の関係は、
「ごめんね」
無理でしょう。
笑みは絶やさないように。
.
742人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:sani | 作成日時:2018年3月26日 16時