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「____おいッ！」
後ろから声が飛んだのが分かる。その主があの幽霊だということも、だ。あいつ喋れるのかよ、というツッコミを心の中で飛ばしながら、ただひたすらに走り続ける。
元から体力には自信がなく、実際一キロでさえ息が大きく上がってしまうほどだ。しかし、鈍痛のする胸の中を恐怖が占めている中、立ち止まれない。
まずはあの幽霊から逃げなければ。
水溜まりを踏み潰し、痛み始めた足を引きずるように走り続ける。ローファーの中の足先が濡れているのが分かる。靴下も茶色く汚れ、制服も見るも無残だ。肌に張り付く感触が気持ち悪い。
小雨だが、剥き出しの衣服や髪を容赦なく濡 らしていく。夏なのに心なしか寒気がするのは、身体が濡れたからだろう。
途中で視界が点滅したような感覚に襲われて、思わず立ち止まる。いけないと足を踏み出そうとするが、くらつく頭がそれを良しとしない。
膝に手をつき呼吸を落ち着かせるが、ハッとして背後を振り向く。そこに幽霊はおらず、また追っている様子もなかった。あるのは雨音だけの静寂のみ。
胸を撫で下ろし、肩からずれた鞄を背負い直して、改めて歩き出す。
胸の痛みは収まっていた。
歩き続けて、とある横断歩道についた。
見知らぬ横断歩道だが、今は何も考えたくなかった。とりあえず渡ってしまおうと思い、信号機の柱に体を預けた。
前髪から雫が滴り落ちる。肌を伝い、やがて重力に計らって落ちていく。
色々なことが頭を過ぎった。今度こそ折り畳み傘を忘れないようにしようだとか、明日はどうやって過ごそうだとか。
どうやってあの幽霊を回避しよう、だとか。
あの時点であの幽霊に私が"視えている"ことを感づかれてしまったに違いない。もしもそうならば、明日から幽霊から確実に逃げなければならないのだ。
面倒臭いことになった、と自分でも思う。
信号が青に変わる。
右足を踏み出し、横断歩道を渡ろうとしたその時。突然視界が白く染まった。
驚いて横を見る。けたたましいクラクションを鳴らして、迫ってくる大型トラックが。避けようにも足が動かない。人の脳とは、突然の事には即座に対応できないものだ。
「もう、散々だ……」
何もかもあの幽霊のせいだ。
昔からそうだったが、幽霊と関わるとロクな事がない。
覚悟を決めて、目を閉じる。走馬灯を見る暇もない。やってくる衝撃に身構えた、その時だった。
「危ねぇ!!」
腕を強く引っ張られた。
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燕＊(プロフ) - ちくわのカルパッチョさん» コメントありがとうございます！あの時はリクにお答えして下さったこと、ご愛読やお気に入りまでして頂いて、心から感謝申し上げます…！お褒めの言葉、とても嬉しいです！これからも当作品を宜しくお願い致します！ (2016年1月6日 2時) (
レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわのカルパッチョ(プロフ) - だいぶ前にイラストのリクを承った者ですが、それがきっかけとなりあの時からこの作品をお気に入り登録させていただいています。とても描写が綺麗で繊細でいつも引き込まれます。これからの展開が楽しみです＾＾ (2016年1月5日 23時) (レス) id: 5e0cf1c1a8 (このIDを非表示/違反報告)
燕＊(プロフ) - 伝吉さん» コメントありがとうございます。紹介の件は大丈夫です。まだそこまでネタバレしてはいけない所まではいってもないので← イラスト、楽しみにしておりますね！ (2016年1月4日 22時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
伝吉(プロフ) - 近日中にイラストを上げられそうなのでご報告にあがりました。そこで一つ提案なのですが、この小説を私の作品で紹介しても構いませんか？勿論、ネタバレしないように気を付けます。どうでしょうか？ (2016年1月4日 21時) (レス) id: bc33d6f617 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 伝吉さん» うわああわざわざ読んで下さってありがとうございます！とても励みになります…。これからも日々精進して参ります！ (2016年1月1日 0時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：燕 | 作成日時：2015年7月17日 1時
