11 ページ23
いつもより尋常じゃない様子に気圧されたのもあって、私は晴香の両肩に手を乗せ、落ち着けさせる。
一方の雨地は、晴香を嫌悪感を孕む理解し難いモノを見下げる目で見ていた。もし晴香に霊感があったら、そんな彼に喜んで「もっとください」と懇願するはずだ。
晴香は潤んだ上目遣いでこちらを見上げる。思わず目を逸らしてしまったが気づかれていないと願っておく。
「うん、聞いてくれる?」
甘ったれた声を上げながらわざとらしく胸に手を置く晴香。どうやら大丈夫なようだ。
隣で露骨に引きつった声がしたが、それには敢えて気にしない。晴香に自肯する。
「うーんと、その、あのね……」
腰をくねらせ、頬を紅潮させ、腰をくねらせ___その繰り返しで、肝心な要件をなかなか言わない。苛立たせる仕草といい、こちらの血管がはち切れんばかりに膨張し、そろそろ破裂寸前だ。
いや、頭の中では理解しているのだ___これは絶対、恋を患った結果なのだと。
晴香はどちらかというと恋愛には興味がなく、また手を出した事もない。友人の恋話には耳を傾けず、ただスポーツに精を出し、汗を流し、身体を鍛える___それが青春だと思っている節もある。そんな彼女が、一生感じる筈がないだろう感情を得てしまったのだ、この感情が何なのか分からず、混乱するのも無理もない。
「早く言ってみ。聞くだけなら出来るから」
だが、こちらとて焦らされるのは嫌いだ。急かしの意も込めながら、努めて優しめな声を掛ける。
すると、晴香は途切れ途切れに語り始めた。
「昨日帰る時だけど、あたし、絡まれたの。二人組の、多分、三年生。抵抗したけど、全然ダメで……」
絡まれた、という単語に私は敏感に反応した。反射的に晴香の肩を掴む。
「本当!? 大丈夫だったの!?」
変人とも取れる性格だが、晴香は私の数少ない大切な友人だ。何があったのならば一応心配もする。
だが、晴香は私の心配なぞ他所に、それどころか頬に手を添え、思い出すのがそれ程恥ずかしいのか、顔を真っ赤にさせた。
「でもある人が助けてくれたんだ。とってもカッコよくてさ、キュンって……」
「……左様ですか」
本気で心配したその上で、ただの一目惚れの話を聞かされた___呆れを隠しきれず、思わずため息混じりの声が出る。
しかし、その口もすぐに閉じた。不意に晴香が「あ、でも」と続けたからだ。
「あの人、最近見ないの……大丈夫かな……」
そう語る晴香の瞳が、不安げに揺れた。
6人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
燕*(プロフ) - ちくわのカルパッチョさん» コメントありがとうございます!あの時はリクにお答えして下さったこと、ご愛読やお気に入りまでして頂いて、心から感謝申し上げます…!お褒めの言葉、とても嬉しいです!これからも当作品を宜しくお願い致します! (2016年1月6日 2時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわのカルパッチョ(プロフ) - だいぶ前にイラストのリクを承った者ですが、それがきっかけとなりあの時からこの作品をお気に入り登録させていただいています。とても描写が綺麗で繊細でいつも引き込まれます。これからの展開が楽しみです^^ (2016年1月5日 23時) (レス) id: 5e0cf1c1a8 (このIDを非表示/違反報告)
燕*(プロフ) - 伝吉さん» コメントありがとうございます。紹介の件は大丈夫です。まだそこまでネタバレしてはいけない所まではいってもないので← イラスト、楽しみにしておりますね! (2016年1月4日 22時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
伝吉(プロフ) - 近日中にイラストを上げられそうなのでご報告にあがりました。そこで一つ提案なのですが、この小説を私の作品で紹介しても構いませんか?勿論、ネタバレしないように気を付けます。どうでしょうか? (2016年1月4日 21時) (レス) id: bc33d6f617 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 伝吉さん» うわああわざわざ読んで下さってありがとうございます!とても励みになります…。これからも日々精進して参ります! (2016年1月1日 0時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:燕 | 作成日時:2015年7月17日 1時