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「……本当、よく噂に本気になれるよね」
呆れた表情を露わにして見せると、晴香は不満気に口を尖らせた。
「だからつまらない人間とか言われちゃうのよAは。いいじゃない、超絶イケメンを探し求めて何が悪い！」
「それ後付け設定のやつじゃないの」
確かに私はつまらない人間だろう。誰よりも現実主義で、常に地に足のついているような安定した生活を好む性格だと自分でも自負しているくらいだ。
我が身大事だから危険なことはしたくないし、仮に幽霊が存在していたとしても触らぬ神に祟りなし、絶対に関わりたくないのだ。
噂もあくまでただの噂。根拠もなければ幽霊を実際に見た人もいない。
信憑性の低い噂を馬鹿みたいに信じて翻弄されるだなんて、まっぴらゴメンである。
「んもう、付き合ってもいいじゃないか〜。どうせ幽霊いないだろうし、頼むよ！」
「いないって思ってるならいいじゃん……」
とりあえず私は断り続けた。
晴香はブースカ言いながらも引いてくれて、やっと自由を取り戻した。閉じていた本を開き、少し湿気た紙を捲る。
雨は好きだが、ジメジメとした梅雨の雨はあまり好きではない。逆に湿気を抜きにして考えれば、梅雨は私にとって最高の時期だと言える。
雨音は、何処か自分を落ち着かせる効果があった。雨音を聞いている内に、徐々に思考の海に浸かっていく感覚がたまらなく好きだ。
周囲の生徒の声と雨音を聞きながら、頁を進める。
「雨の日に現れる幽霊、ねぇ……」
雨の日にだけ現れるというのなら、その幽霊にとって雨の日がどれだけ特別だったのだろうか。
特別の意味は分からない。単純に好きなのかもしれないし、もしかしたら嫌いなのかもしれない。
もしもいるなら、少し会ってみたい気もした。あくまで、気がするだけだ。
◆
その日の昼休み、友達の少ない私は図書室に訪れていた。教室はうるさいし、何よりも静かな図書室では雨音がよく聞こえるのだ。その中で本を読む時間は、自分にとって至福のひと時である。
この日は何故だか、誰一人として人がいなかった。偶然席を外しているのか司書もおらず、図書室は完璧な静寂に包まれていた。薄暗い室内は、若干不気味でもある。
気にせず本棚に向かい、適当に背表紙の題名を見て取り出す。次に表紙を見て、気になったものだけを腕の中にキープしておく。その繰り返し。
黙々と選んでいると、ふと横から気配がした。
誰もいないはずなのに。
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燕＊(プロフ) - ちくわのカルパッチョさん» コメントありがとうございます！あの時はリクにお答えして下さったこと、ご愛読やお気に入りまでして頂いて、心から感謝申し上げます…！お褒めの言葉、とても嬉しいです！これからも当作品を宜しくお願い致します！ (2016年1月6日 2時) (
レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
ちくわのカルパッチョ(プロフ) - だいぶ前にイラストのリクを承った者ですが、それがきっかけとなりあの時からこの作品をお気に入り登録させていただいています。とても描写が綺麗で繊細でいつも引き込まれます。これからの展開が楽しみです＾＾ (2016年1月5日 23時) (レス) id: 5e0cf1c1a8 (このIDを非表示/違反報告)
燕＊(プロフ) - 伝吉さん» コメントありがとうございます。紹介の件は大丈夫です。まだそこまでネタバレしてはいけない所まではいってもないので← イラスト、楽しみにしておりますね！ (2016年1月4日 22時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
伝吉(プロフ) - 近日中にイラストを上げられそうなのでご報告にあがりました。そこで一つ提案なのですが、この小説を私の作品で紹介しても構いませんか？勿論、ネタバレしないように気を付けます。どうでしょうか？ (2016年1月4日 21時) (レス) id: bc33d6f617 (このIDを非表示/違反報告)
燕(プロフ) - 伝吉さん» うわああわざわざ読んで下さってありがとうございます！とても励みになります…。これからも日々精進して参ります！ (2016年1月1日 0時) (レス) id: f04a1805d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：燕 | 作成日時：2015年7月17日 1時
