アルペジオを聴かせてよ...yuta.k

#48 ページ48

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他のメールを見ても

まるで彼女へ送るような

好きとか、可愛いとか

一緒にどこかに行きたいとか

他の人に嫉妬するとか。


年齢の割に大人びた紫耀なら絶対に言わないような

１９歳の等身大の男の子の言葉たちが

あまく、やさしく並べられていた。


それから美しい桜の画像や

その時々で紫耀が見てきた美しい景色たちも一緒に。


ただ、日記のような印象も見受けられ

始めに読んだものは読み手を意識していた様だ。

やはり、それだけは送ってくれようとしていたのかもしれない。




初めて知る紫耀の本当の気持ち。

全部が全部、まっすぐで

混じり気のない言葉は美し過ぎる程に素直。

添付された花火の画像と同様に

キラキラと光り輝いていた。


それなのに

紫耀の側にいた私はどうだろうか。


彼の気持ちも知らないで

自分の居場所を確保することに必死で

付き合ってきた人達だけでなく

紫耀のことも知らないうちに随分と傷付けてきた筈だ。


こんなにも不誠実な自分に

自責の念が激しく迫ってくる。


もし紫耀が生きていて

このメールを送ってくれたなら

私たちの関係性は変わっていたのかもしれない。


今となってはもう叶わないことだけれど。


だったらせめて

こんなにも長い間私を想ってくれていた紫耀に

恥ずかしくない様に

それに相応しい私になろう。

不誠実で、軽率に流される様ではいけない。


それから、紫耀が上京してから見てきた景色や

身を置いていた環境を知りたくて

私も東京へ行こうと、決めたのだった。

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