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#45 ページ45

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「…もうすぐ3年になる、ね。…明日会いに行ってくるよ」


「…そっか。Aも、強くなったね?」



時間を掛けて、徐々に事実とも向き合えるようになった。
でも、言葉にされるとやっぱり
まだ胸の奥をぎゅっと握り潰されるような感覚が襲う。

けれど今日位は心配を掛けないように
とびきりの笑顔で祝福をしたい。



「うん…私のことはいいから。絶対幸せになってね。何かあったら、いつでも愚痴聞くからね?」


何かって何?、何だろうね?、なんて言いながら笑い合う。






その事実を理解するのには

多くの時間が必要だった。

紫耀が、もうこの世界にいないなんて…

信じられず、葬儀にも出席出来ずに。


もし出席してしまったら、それを認めるみたいで。


真実を知ることを拒否して

ただ自分の殻に閉じこもって。

身体中の水分が全て涙に変わって

もう既に枯れ果ててしまった筈なのに

時間が経てば、自然と流れてくる。



大学にも行かなくなり
ピアノを弾くことも無くなった。



紫耀が東京で頑張っているから、と

そう思ってやってきたら

何とか評価される様になった、私のピアノ。

戦友亡き今、思い出が多すぎるそれは

一番遠ざけたいものに違いなかった。



用事が無ければ部屋からも出ずに。

なんのやる気も起きない。



たまにくれる一言だけのメッセージも

もう届くはずはないと分かっているのに

スマホだけは握りしめたまま。

ただ時間だけが過ぎて行った。



憔悴しきった私に

初めこそ心配していた当時の彼も

声を掛けても何ら変化のない私に

愛想を尽かしてしまった。



母親ももう無理に厳しく接する事はない。

私を心配して、何かと理由をつけては

外へと連れ出してくれたのは母とユリだった。






紫耀は19歳の夏に亡くなった。


上京して丸3年が経った頃。


それなりに遊ぶ友達も出来たらしく


夏の暑い日に出掛けた海で。




その日は急に波が強くなり

お昼過ぎに突然、遊泳が禁止になったらしい。




波が落ち着くのを砂浜で待っていると

1人の女の子が海へ入って行った。

風に飛ばされた浮き輪を追って。



それに気づいた紫耀は危険も顧みず

自分も海へ入って行ったのだった。




女の子に浮き輪を被せ、助けると

彼だけが波にさらわれてしまって…。

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設定タグ:岸優太 , King&Prince   
作品ジャンル:恋愛
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moco(プロフ) - りんさん» りん様、ご覧頂きありがとうございます!亀更新になりそうですが、続きもお読み頂けたら嬉しいです! (2019年4月7日 8時) (レス) id: 169c616d0b (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - コメント失礼致します。お話読ませて頂きました!これからのお話も楽しみにしています。 (2019年4月7日 1時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:moco | 作成日時:2019年4月3日 22時

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