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4月に入って最初の日曜日。
ようやく桜も見頃を迎え、待ちに待ったお花見の日がやって来た。
優太くんと、彼の友達2人と、友達の彼女と私の5人。
何度も集まったことのあるメンバーだった。
昨年は引っ越しの荷物整理などに追われ、片付けの合間に、ほんの少しだけ訪れただけ。
1人で足を運んだ私には、大勢の花見客に溶け込むことが出来ず、春風になびく桜を遠くから見守る事しかできなかったのだった。
昨日から準備を進めていたお弁当作りもあとはお重に詰め込むだけ。
おにぎりを詰め始めた時に、スマホから通知音がなった。
『Aさんおはよー!起きてますか?』
画面に目をやると優太くんからのメッセージだった。
菜箸をお重に置き、スマホを手に取る。
時刻は8時30分を過ぎた所で、集合時間までは十分に余裕があった。
『おはよう。起きてるよ!優太くん大丈夫?』
昨日は土曜日で、遅くまで働いていた彼。
仕事終わりにシャワーだけを済ませ、またすぐ場所取りに出る、という過酷な役を自ら買って出てくれた。
『大丈夫です!けど、桜がめちゃめちゃキレイなんで、早く見てほしい!』
私の返信からすぐに返してくれた言葉。
それは楽しみで昨日の夜からそわそわと、落ち着かなかった私の胸を簡単に高鳴らせた。
適当なスタンプを1つ返し、もう一度菜箸を手に取る。
5人分に足りるであろう食べ物たちを、パズルのように次々と詰め込む手は、先程よりも忙しく動いていた。
自宅から公園までは徒歩15分ほど。
お弁当と大きなバッグを手に歩みを進めると、徐々に薄いピンク色に染まる目的地が近づいて来た。
1歩1歩踏みしめる度に、そのピンクはより鮮明になっていく。
その鮮明さと共に、そわそわとくすぐったかった胸の辺りはどきどきへと変わり
やがてドクン、ドクンと大きな鼓動へと変わる。
体中の全細胞が心臓という器官に支配されているようだった。
桜の木の下には既に場所取りをしている人達が大勢いた。
わずかに震える手でスマホを取り出し、優太くんに電話を掛ける。
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moco(プロフ) - りんさん» りん様、ご覧頂きありがとうございます!亀更新になりそうですが、続きもお読み頂けたら嬉しいです! (2019年4月7日 8時) (レス) id: 169c616d0b (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - コメント失礼致します。お話読ませて頂きました!これからのお話も楽しみにしています。 (2019年4月7日 1時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:moco | 作成日時:2019年4月3日 22時