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「今は恋人よりも友達が欲しい…かな」
「ちょ、優太がっつきすぎ。Aちゃん引いちゃってんじゃん」
「いやいや、そうじゃなくて!可能性はゼロじゃないっていう話ですよ!!好きとか嫌いじゃなく…って、俺のこと、嫌わないで下さいよ?」
コロコロと表情を変えて、忙しく話す優太くんが可笑しくて。
和也さんと私は声に出して笑った。
「でも、友達っていうことなら俺に任せて下さい。ご飯美味しい所とか、遊ぶ場所とか、どこでも連れて行ってあげますから。地元の仲間もいい奴ばっかで、紹介したいです」
優太くんはワクワクしたような表情だった。
彼程の親切で優しい人は希少だと思う。
よくよく話してみると、なんとなく感じていた違和感がより浮き彫りになり、何の気なしに尋ねる。
「優太くんは、どうしてバーテンダーになろうと思ったの?」
和也さんはまさに転職という見た目や人柄なのに対し、優太くんは真面目で不器用そうで似つかわしくないように感じられた。
私の中で“バーテンダー”という職業に幾らか偏見が混じっているのかもしれないが。
「……んーー…。どうして、ですかね…」
彼は俯きながら
悲しいような、悔しいような、ほんの少し愛しいような表情になる。
時間にすれば、ほんの2、3秒だろう。
その一瞬が、もっとずっと長く感じるほど印象的で。
その表情は、不謹慎にも美しいとさえ思えた。
目に焼き付いて離れない、その表情が。
「…俺、勉強出来なくて、バカだったから。飲食店だったら働けるかなぁって」
優太くんは目線を戻し、眉を下げたまま微笑んだ。
儚げな雰囲気が桜の写真を見せた時と重なる。
「…あ、優太。そういえば今日マスタード買っといてくれた?」
和也さんがふと思い出したように言うと、優太くんは目を丸くし焦り出した。
「やっば…、俺急いで買ってきます」
優太くんは財布だけを持って外に駆け出した。
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moco(プロフ) - りんさん» りん様、ご覧頂きありがとうございます!亀更新になりそうですが、続きもお読み頂けたら嬉しいです! (2019年4月7日 8時) (レス) id: 169c616d0b (このIDを非表示/違反報告)
りん(プロフ) - コメント失礼致します。お話読ませて頂きました!これからのお話も楽しみにしています。 (2019年4月7日 1時) (レス) id: 2bc4477fb2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:moco | 作成日時:2019年4月3日 22時