恋の魔法を【￠®/短編集】 (ページ15)

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ピエロの魔法。【csc】ページ15

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いつの日か、押し入れの奥に閉まってあった桃色のピエロの人形を見つけた。
お母さんもお父さんもその存在を知らなくて、最初は他に人形を持っていなかったから、なんとなく持っていただけだった。

ほこりまみれで汚れていた服をお母さんに手伝ってもらって洗って綺麗にしたら、どこか人形が喜んで見えたのが嬉しくて。そうしている内に愛着が湧いてしまった。

子供の頃はおままごとで使ったり一緒に寝たり。今は流石に大人になったので、できなくなってしまったが、今も机に飾っている。
何年も経ったが、綺麗に残っている。

外には持っていけないけど、いつも家を出るや帰ってきた時、嫌なことや楽しいことがあった時の話し相手など。

1人の家族のような存在で、私の宝物。

「…じゃ、行ってくるね。ふらんちゃん」

子供の頃、歴史のテレビで見たとある歴史人物の名前をつけた。理由は多分、子供ながらの好奇心でつけたのだろう。でも今更変える気もなかったから、名前はそのままだ。

懐かしさに浸りつつ、私は家を出た。

◇

「それじゃあ、カンパーイ！」
「カンパーイ！！」

会社の飲み会。
皆が各々で楽しんでおり、わいわいと賑やかだ。
私も同僚や、先輩と喋りながら食べ飲みをした。

「そういえば、Aちゃんは彼氏とかいる～？」

同僚の1人が、顔を火照らせてこっちへ来た。

「あ、それがいなくて…」
「えー？ウソ〜！Aちゃん、めっちゃ優しいし可愛いからいると思ってた〜。今までは？」
「い、いやぁ…それがぜんぜん…」
「えぇ〜ほんとう？もしかして理想高い系？」
「そういうのじゃないとは思いますけど…」

酔っているせいか、すごく絡まれる。
私は一刻も早く、立ち去りたいがそう簡単にはいかない。

「あ！ちょ、先輩〜！」
「ん？どうしたの？」
「Aってば、今まで彼氏いたことないんですって！ちょっと相手してやってくださいよ！」
「ちょ、ちょっと…！」
「あはは、俺でよければいいよ？」

そう言って隣に座る先輩。
満足したらしい同僚は「じゃ、頑張ってね〜」と呑気にどこかへ行ってしまった。

「Aちゃん、何頼む？」

先輩はメニューを取ると私の方へ近寄る。

「い、いえ…なんでも…」
「あはは、キンチョーしてんの？可愛いね」

緊張とかそんなんじゃないんだけど…！！
私は叫びたい気持ちでいっぱいだった。

その後も先輩に肩や手を触られ、離れようとすると手を捕まれ、結局終わるまで先輩と飲むことになった。