深夜の魔法。【drm】 ページ1
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人を好きになることなんて、この先あるとは思わなかった。
高校の頃、何度か彼女がいたことはあった。
でも、付き合っていて分かったこと。
俺なんかは、誰かと付き合ってはいけないのだと。
昔から、相も変わらずゲーム好きで、親からのお小遣い、バイトで貯めたお金は全てゲームの課金に費やして。
暇さえあれば、ゲームばかりの日々。
そんな奴と、付き合おうと思う女性は絶対いない。
だから、正直諦めていた。
別に、付き合うとか結婚だとか、したいとすらも思わなくなった。
…そう、そう思っていた。
「…だるまくん、こんばんは」
「こ、こんばんは、Aさん」
にこりと、微笑む彼女。
深夜のコンビニ。
基本人に会ったり、人混みの多い所に行くことを嫌っていた俺は、普段から買い物などは人の少ない夜中に素早く済ませていた。
ただ、そんな深夜のコンビニで、唯一会う人。
俺の家の近くに住んでいて、歳も近い彼女と出会ったのはほんのしたきっかけだった。
その日も深夜のコンビニで買い物を手早く済ませようと思ってレジで会計をしていた時、スマホを置き忘れてきたことに気づいた。仕方なく、財布で済ませようと思ったのに、その財布すらも置き忘れてくるという失態。
鞄に入っているだろうと思って中身を見ずにそのまま持ってきたツケが回ってきたのか。
サッと血の気が引いていくようだった。
後ろで俺の会計が終わるのを待つ人、不機嫌そうな店員の顔。
死にそうなくらい、恥ずかしくて、どうしようもなかった。
取りに帰るしかない、そう思った矢先だった。
「…これで、お願いします」
俺の真横から、すっと真っ直ぐに伸びた腕。
俺は目を見開いて振り返った。
すらりと伸びた髪と、切れ長の目。
それは真っ直ぐに目の前を見つめていて。
それに気を取られていた間に、店員は会計を済ませ、後ろの客を呼んだ。
はっと、我に返った時には、既に彼女はコンビニを出ているところだった。
「あ、ちょ、ま、待ってくれ！」
後先考えずに、気づいたら彼女を止めていた。
振り返った彼女は不思議そうにこちらを見つめて。
「…なにか？」
ふわりと靡く髪。
目を奪われた。
月明かりに照らされた、名前も知らぬ彼女。
「………っ、お礼させてくれんか？！」
気づいたら、そんなことを口走っていた。
それが、始まり。
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作者名：サンリーブ | 作成日時：2022年9月21日 17時
