白のリコリスが咲く【Harry potter】 (ページ26)

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Aが起きてから、マダム・ポンフリーは2度目となる、蜂蜜色の薬をAに手渡した。

「先程は一時的な量しか飲めていませんからね、もう一度飲みなさい__気分が悪く無いのなら、飲み終えた後軽食を食べるといいでしょう」

手渡された薬を飲み込むと、ジンワリと身体の芯から暖かさが帯び、身体に血が巡った様な感覚になった。

「これは貧血の薬か何かですか？」

軽食に手を伸ばす気にはなれなかったが、随分と気分が良くなったことで薬についてマダムに質問すると、彼女は懐かしむ様な柔らかい表情をしながら答えてくれた。

「___それは貴方のお祖父様にあたるミスター・グレイディが開発した鎮静剤の様なものですよ___もとは、学生時代に満月前の〝人狼化〟の症状に苦しんでいたリーマス・ルーピンの為に彼が開発した薬です」

「ロキもそこに関わって、一時期彼女もそれを調合していました___私達は〝シロップ〟と呼んでいて__今回、貴方が入学するにあたって、セブルスがその調合方法に独自のものを取り入れて貴方の為に作り直してくれました」

入学してから、以前の様に親しくセブルスと関わりを持てていない事に少し寂しさを感じてはいたが、思いがけないところでも支えてくれていることに嬉しく思った。

また、マダムの話からはリーマス・ルーピンと母親の学生時代の関わりが伺えた。

「リーマスは随分と自己肯定感の低い生徒でしたから___ロキは常に陰ながら支えていましたよ。彼女がリーマスと付き合いだした時はとても嬉しかった」

「2人が付き合う前からこの薬があったのなら、母や祖父は、何か特別な想いが彼にあったのですか？」

「彼らはリーマスが〝人狼〟になるうんと前から幼馴染だったのですよ。なんでも、父親同士がかつての学友だったそうで__彼が〝人狼〟になってからは連絡が途絶えて疎遠になっていたみたいですが__高学年ごろに和解し、交際も始まった様ですね」

「とにかくあの頃は___平和な時代とは言えなかった。明日は我が身。〝例のあの人〟の脅威から逃れることでみんなが精一杯だったのですよ」

そんな時代でなければ、母と彼はどんな風に人生を送っていたんだろう____

想像しても仕方がないことではあったが、ぼんやりとそう思っているところで、コンコンと、医務室の扉を軽やかにノックする音がした。