-50- 黄百合 ページ50
沈黙が続いた後、丸井は口を開いた。
「…ついてねぇ」
「このペテン師を騙せると思ってるのかのぅ、さっさと白状するぜよ」
「……ま、仁王は騙せないか。お前にだけ言うけど俺はあの日、はちゃめちゃに嘘ついたぜ」
「やっぱり、おかしいと思ったんじゃ。閉店時間は18時じゃなくて、本当は19時30分。期間限定スイーツである、まるごと白桃蜂蜜タルトは先月から始まって、来月まで続く…期間限定は終わってすらない、てのが正解じゃろ？」
「そ、全部当たり。まあ調べれば全部わかる事だから仁王にはすぐバレると思ってた」
「まぁな、ブン太もまだまだぜよ」
仁王はかすかに微笑んだ。丸井を嘲笑うかのような笑みだった。
「ところでさ、仁王も嘘ついてたっしょ」
丸井は仁王の目線を捉えたが、仁王は猫のようにするりと抜け出した。
「…なんのことやら」
仁王はふわふわとした返事をした。
「俺、覚えてるぜ。2年前、仁王が姉貴の誕生日プレゼント何がいいって聞いてきたことをな」
「…ほぅ、それで？」
「仁王の姉貴の誕生日、冬だよな？
＿＿＿＿12月22日」
丸井はほくそ笑んだ。崖っぷちで犯人を追い詰めた刑事の気分だった。
「よく覚えてたな」
仁王も静かに笑った。その笑いは、すなわち降参。逆転裁判もびっくりだ。
「天才的？」
「天才的じゃな」
「なんか頭の隅っこで、仁王が姉貴の誕生日は日本で1番多い誕生日って言ってたことが残ってたんだよぃ」
「…そんな情報言わなきゃよかったぜよ」
仁王にとって、後味が良くない結果になってしまった。
「まあ今回はお互い秘密にしよーぜ」
「ああ、お互い様ってやつじゃな」
「仁王、俺、１個だけ聞いておきたいんだけど」
「奇遇じゃな、丸井に聞いておきたいことがあるんじゃ」
「「なんで嘘ついた？」」
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿
『っくしゅん…！』
「Aちゃん風邪！？大丈夫！？保健室行く！？」
『陽葵、大袈裟』
風邪でも何でもない時にくしゃみすると誰かに噂を立てられてるって聞いたことがある。
そんな迷信、信じる人の方が少ないよね。
私も、信じないかな。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 92人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「テニスの王子様」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：牡丹 | 作成日時：2022年5月1日 14時
