向日葵はいつも私を見ている【テニスの王子様】 (ページ47)

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-47- 黄百合ページ47

「あのさ、体育祭の日。

いきなり、抱きついて…悪かった。ずっと謝りたかったんだ、ごめん」

まさか、数分前に忘れようとしたことが話題に出てくるなんて、思いもよらなかった。

『…えっ、と……あ、あのことはね…』

「Aが男が苦手なこと、触れられるのが苦手なことも全部わかってた。わかってた上で、俺、お前に酷いことさせ…」

『…そんなことない』
私がそう言うと、丸井くんは驚いたように、目を見開いた。

『あのとき、私どうすればいいかわからなかった。そんな時に、丸井くんはそばに居てくれたの、凄く、安心した』

私は息を飲んで、言葉を連ねた。

『だから私から言わせてよ。

体育祭の日、迷惑かけてごめんなさい。

あとね、もう一度、言わせて。

＿＿＿ありがとう』

すると、食欲を刺激する香ばしい匂いが漂いだしたと同時に店員さんが“まるごと白桃蜂蜜タルト“の商品名を読み上げ、2つ分のタルトが目の前に置かれた。私は店員さんに軽く会釈をした。

『美味しそう。お腹空いちゃったし、食べよ？』

「っあ、あ…そうだな！俺すっげぇペコペコだわ！！食べよーぜ！」

スプーンで白桃とタルト生地の一部を掬い、口の中へと運び咀嚼する。

水気たっぷりの甘いけど、少し酸味の効いた白桃の味が口の中に広がった。舌も喉もとろける美味しさ。期間限定なのが惜しい。このタルトは、私を毎日食べていたいと思わせてくる。

「『美味しい…！』」

寸分の狂いも無く、声が重なった。あまりにぴったりだったので、お互い目を丸くして、静かに驚いた。

あまりに同じタイミングだったので、お互い突拍子のない声で笑ってしまった。

丸井くんの考えることは到底わからない。けど、凄く真っ直ぐな人だと実感した。

そして私は、二口目の白桃を飲み込んだ。