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-19- 山査子 ページ19
そこには仁王くんがいた。
仁王くんはペロリと舌なめずりをし、
「この卵焼き、絶品じゃな。俺が調理実習で作った時とは大違いぜよ」
と、満足そうな顔をしていた。
『あ、ありがと、ね』
褒められたのは嬉しいけど、せっかく上手に出来た卵焼きだったのに、自分で食べられなかったのは少し悔やんでしまう。
……ちょっと待って。さっき私の手を掴んだのは仁王くん。食べたのも仁王くん。でも箸は私。
いわゆる、“関節キス“というものをしてしまった？
全ての状況を理解した時、私は体の中が羞恥で満たされ、耳がやたら熱くなった。
「仁王ずりぃぞ！俺も卵焼き食べる！」
「陽葵も陽葵も！！」
『……もう好きにして』
結局その日、私が卵焼きを食べることは1度もなかった。
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作者名：牡丹 | 作成日時：2022年5月1日 14時
