高校生の事情【角名倫太郎】

29.距離 ページ29

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角名side




部室で着替えていると、侑が鼻歌を歌いながら入ってくる。



｢おつかれ、随分ご機嫌だね｣




そう言うと何故か急に怒り出した。



｢はあ！？別に機嫌よくないわ！！！｣
｢何怒ってんの…？｣



すると治もやってきて侑の肩をつかんで嬉しそうに言った。



｢Aちゃんとデートするから浮かれてんのやろ？｣
｢はあ！？ちゃうわ！！誰があんな女…っ！｣




Aって…昔から変わらないな。
なんでこういう素直じゃない男にばっかり好かれるんだろう。
……素直じゃないのは俺も同じか。




｢ふうん、デートなんだ。よかったね｣
｢…だからデートやないって…｣




治が出て行った後。侑は少し真面目な顔をして俺を見た。




｢ええねんな？｣
｢何が｣
｢Aとデートしても｣
｢デートじゃないって言ってたじゃん｣



ホント、Aも侑もバカだな。



｢角名が手を引くんなら俺本気出すで。俺本気になったら落ちへん女とかおらんからな｣
｢すごい自信……好きにすれば｣




正直、Aが俺のことをまだ好きでいてくれて
稲荷崎まで俺を追ってきてくれたことは嬉しかったんだ。
それでも、今の俺ではAを悲しませることしか出来ない。
現にAと俺はもうすでに距離があると感じた。
彼女が俺を見る瞳は、腫れ物に触るような。顔色を窺っている目の色。
傷ついた俺に触れることが出来ない、という態度。
侑といるほうがよっぽど楽しく過ごせるだろう。

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