高校生の事情【角名倫太郎】

14.虚無 ページ14

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｢何？｣
｢教室では話しづらくて…ちょっと、来てもらえる？｣



何も言わず、倫太郎はすんなりと私に着いてくる。
昔とは違う。
会っていない間、何があったかなんて知らない。
とは言え私の中ではあの時のまま、時が止まっていて。
彼と一緒にいるのはやっぱりドキドキするんだ…。



｢誰とも付き合わないよ、俺は｣



告白だと思ったのか。先手を打って倫太郎はそう切り出した。



｢ちゃうわ｣



何も期待していなかったけど、先に振られて少し傷ついた。



｢誰とも付き合わんって…中学の頃は、色んな子と付き合ってたんやろ？｣
｢ふーん、聞いたんだ。そう言えばあんたとも付き合ってたことあったね｣



過去形。彼にとってはもう私は過去なんだ。
私は拳を握り締めて言った。




｢なんか、あったん？｣



｢何にもないよ。別に。誰と付き合ったって同じだって思ったんだよ。
何も楽しくもないし、何も変わらない。俺には理解できないよ、恋愛が楽しいなんて｣




倫太郎と過ごした時を思い出した。
可愛いって言われて喜んだこと。
しゃべり方が変だって言われて、傷ついたこと。
バレー部のマネージャーやればって言われたこと。
下の名前で呼ぶって言われたこと。
林間学校で話したこと。
昔のことを謝ってくれたこと。
付き合ってと言われたこと。
抱きしめられたこと。手を繋いだこと。キスしたこと。
引越しが決まって、別れを受け入れて、再会を誓ったこと。


全部私にはかけがえのない思い出だし、何一つ終わってはいないのに
倫太郎の中ではもう終わったことどころか、意味のないことだったんだと悟ると
今まで生きてきた中で一番悲しかった。

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