【陰陽師】女子高生と茨木童子 2

名前があるの ページ6

「あの、そんなに気を遣わなくても…」


「気にするでない異界の者。俺が向かう予定の所が清明の屋敷に近いだけのこと」

なるほど、ついでに送ってくださると…

確かにいつ鬼が出て来てもおかしくない雰囲気だし、甘えておこう

私は黙って大天狗の後ろを歩いた

…茨木童子より少し身長低いな

大天狗の背中に生えている黒くて大きい翼をじっと見つめる

ふさふさと動きに合わせて動くそれに触ってみたい衝動にかられる


…っだめだ！そんなことしたら怒られそう


大天狗は好青年だが、人を近寄らせない雰囲気を出している

鋭い水色の瞳も、小妖怪程度ならビビってしまうだろう

私も少し、この人と仲良くなるのに時間かかりそう…

優しいのはわかってるけどね！


「おい」

「は、はい！」

呼ばれて思わずハキハキとした返事をしてしまった

や、やらかした…恥ずかし


徐々に顔から湯気が出て来そうな感覚に陥る

そんな変な私を、大天狗は口角を少し上げて微笑む

わ、笑ってくれた！？

いっイケメン…

「先程から気になったのだが…その膝の怪我はどうした？」

大天狗の視線が私の右膝を捉えた

「実は川で転んでしまって…」


ヘヘヘッと笑って誤魔化す


その後のことを思い出したくないからだよ！


茨木童子があんなことをするとは思わなかったんだもの！

ただでさえ赤いのに、更に赤くなりそうだ

「フッ異界の者は少し不注意なようだな」


さらっとムカつくこと言いやがった

だが正論…言い返せないっ

ていうか…

「私、異界の者じゃなくてAというちゃんと名前あるんですけど？」


異界の者異界の者って…私をそんなに余所者にしたいわけ？


まあ確かに余所者だけれども、距離を置かれているようで何か嫌だ


「ふむ…そうか」


大天狗は私の方を向いて近寄る


そして私と大天狗の距離が縮まった


えっ…？


すると、大天狗が持っていた団扇で私の顎を上げる


「大天狗？」


何故か抵抗する前に、この意味不明な行動が理解できなかった


なんで私顎クイされてるの、団扇で…


大天狗の瞳には、私が映った


「大妖怪である我に、名を呼ばれたいと？」


あ、あれ…先程微笑んだやつと違う気が


突然意地悪になった大天狗


こんな人だったなんて…！


「い、いやその、違うよ…異界の者とか呼びづらいだろうなって思っただけだよ」


「ほう、そうか…っ！」


すると大天狗は私から視線を離した


何か、悪いものが近付いてくるのを私も感じたのだ

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