【陰陽師】女子高生と茨木童子 2

おまけ 新年を迎えるとき2 ページ34

「…うむ、今宵もよい月だ」


青年の姿をした妖怪…元は神であった、一目連が盃を片手に、冬の寒さの厳しさにあっても輝きを失うことのない月を眺めて呟いた



安倍晴明の庭院もすっかり、冬の形を成し大きな桜の木は逞しい幹や枝を晒し、表面には雪が積もっていた


一目連の隣に座る神、荒が酒を仰ぎながら、月を見上げる一目連の横顔を見つめる



「今年も、残り僅かだな」


美青年の神は特に興味も無く、言葉をつむぐ


周りには空中に浮かぶ物体がせわしなく回る


一目連の隣にうずくまっている龍神は浮遊物が気になるのか、じっと見つめていた



「そうだ…荒は何かやり残したことはあるか？」



無愛想な神に、一目連はにっこり笑い問いかける



「ない。新年になろうが何も変わらん」



「そうか。俺は、今までより皆と仲良くしていきたい。願わくば、より多くの人間を助けたい」



心優しき妖の言葉に、荒の眉がピクッと動く



「なぜ、そうお前は…あまいやつだ」



「おや、俺の新年に向けての目標は気に入らなかったか？」



それは残念だ、と一目連は盃に口をつける



「〜〜〜！」


荒は物音がする、屋敷の方に目を向ける



「何事だ？」



一目連の心配そうな声が出たその時、温かい格好をしたAが走ってくるのが見えた



その後ろには黒い角を生やした夜叉が叫んでいる


「おい女！こんな夜にどこに行きやがる！」


「山！」


「山あ！？」


Aは夜叉の頓狂な声を無視して門から走り出て行った


「…騒がしいやつらだ」


荒ははぁーっと長い溜息をついた



「この時間帯に山とは、危ないな」



一目連はよいしょっとと立ち上がる



「おい、どこへ行く気だ」



「どことは、Aのあとを追いかけるが？」



再び荒は溜息をついた



頭に手をやり、この鈍感に説明するのも面倒になってきた


「あの人間のことは心配いらん、放っておけ」


「しかし、だ…もし妖怪に襲われてしまったら」


一目連は心配そうに言葉を発する


「山にはあの鬼いるだろう。人間も、あいつ目当てだ」


「そうか、茨木童子か」


なら大丈夫だな、と言い再び荒の隣に座った



「人間と妖、か……」


荒は言い続けようとした言葉を、酒とともに飲み干した

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