癒しの音 ページ29
大天狗は鼻で笑い、笛を取り出した
「今から奏でる。一時期手を離す…落ちるなよ」
そう言って私から手を離し、笛を構えて口につける
やがて優しい音が聞こえ始め、私の耳を通り過ぎて辺りにまで響く
私は聞き逃さんと耳をすます
聞く者全てに安らぎを与えるような、笛でこんなことをできるのは大天狗だけだろうなあ
目を閉じながら指を動かし、音を吹く大天狗の姿はまるで絵に描かれたものがそのまま浮かび上がってきたような、美しい光景に目を奪われる
私は不覚にも、胸を鷲掴まれた気分に襲われた
…意地悪なところがなければっ
私はそっと瞼を閉じた
やがて音域が徐々に高くなっているのに気がつく
それは寂しや、切なさを連想させるようなものだった
…茨木童子
眼に浮かぶのは、愛しい鬼
強いはずなのに、触れたら崩れていきそうな気がして
心の中で伸ばした手をピタリッと止める
私が近付けば近付くほど、傷付けるのかな
じわっと目元が熱くなった
わからないよ、あなたの気持ちが
知りたいよ、もっとあなたのことを
望めば望むほど心が苦しくなる
…同じ気持ちには、なれないの?
目を開けると、涙が溢れ出し頰を伝って落ちていく
拒絶されても尚、私は茨木童子のことを想い続けていた
私はバカだ…何となく理由わかってても、嫌いになれないなんて
演奏が終え、大天狗はゆっくり目を開けると目の前で静かに泣いている私を見てギョッとした
「…………っ」
すると、何も言わずにそっと私を引き寄せ抱きしめた
「大…天狗……?」
突然の行動に驚きはしたが、突き放そうとは思えなかった
否、そんな気力は私にはもう残っていなかった
「そなたは気が強くて思い込みが激しく、女らしい華麗さもない」
…はっ!?
泣いている女にそんなこと言う!?
私は更に悲しく思い、大天狗の腕の中から出ようとした時____フワッと頭を優しく撫でられた
「だが…優しい。そなたのことだ、誰にも悟られぬよう1人で泣いていたのだろう」
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はぐはまさ - ranさん» ranさん!読んで頂きありがとうございますm(__)m般若ですね!少しずつ物語の中で登場させていきます(^ ^)貴重なご意見、ありがとうございます! (2018年2月3日 14時) (レス) id: 1b3eeb1020 (このIDを非表示/違反報告)
ran - とっても面白くて素敵な話ですね♪♪ 般若との出会いも見て見たいと思いました(*^^*) (2018年2月2日 23時) (レス) id: 1a72ca3fb7 (このIDを非表示/違反報告)
はぐはまさ - いあち五めさん» いあち五めさん!あけましておめでとうございます(*^_^*) 更新遅くなってすみません!暫くこの状態が続きますが、許してください(°_°) (2018年1月2日 10時) (レス) id: 1b3eeb1020 (このIDを非表示/違反報告)
いあち五め - 明けましておめでとうございます!久し振りに更新されてて嬉しいです(´`*)更新お疲れ様です (2018年1月2日 2時) (レス) id: 75ac0719d6 (このIDを非表示/違反報告)
はぐはまさ - ふじさん» ふじさん!コメントありがとうございます( ´ ▽ ` )わかりました!次作は大天狗との恋愛にします!笑 その作品を作るのにまだ時間がかかりますが、許してくださいm(_ _)m (2017年11月14日 16時) (レス) id: 1b3eeb1020 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はぐはまさ | 作成日時:2017年10月21日 23時