【陰陽師】女子高生と茨木童子 2

雨と優しさ ページ22

「げっ大天狗！？くそ〜…覚えてろ！」


捨て台詞を吐いた天邪鬼達は空から見下ろしている大天狗を見た途端、どこかへ逃げていった


…大天狗だったら茨木童子の時みたいに吹き飛ばすかもしれないからね


どうやらあの鬼達は学習したらしい


大天狗は雨中、地面に降り立つ


「そなたは余程妖に好かれる人間なのだな」


「へへ…大天狗、雨に濡れて風邪引くよ？」


私は大天狗に近寄り、傘の中に入れる


…が、濡れている痕跡が全くなかった


「我は風を操って雨を防いでいる。問題ない」


便利だね！？


「そか。じゃあ、またね」


「待て」


横を通り過ぎようとした時、大天狗が私の手首を掴み呼び止めた


「そなた…何かあったのか？」


予想もしなかった言葉が、大天狗の口から放たれた


私は動揺を隠せなかった


「そんなに…わかりやすい？」


大天狗はコクンッと頷く


「そのような生気のないそなたは初めて見たからな」


いつも鋭い目が、どこか優しさを含んでいる目になっていることに気が付いた


…だめだっ優しくされてしまったら私は


掴んでいる手を振り払おうと身動いだが、敵わない


どうして、優しくするの


ギュッと歯の奥を噛みしめる


もう中途半端な優しさなんていらないのに…


「離して」


下を俯いて、私は言った


それはどこか懇願のようにも聞こえる


「断る。なぜそのような辛そうな顔をしているのか…我に申してみよ」


嫌よ、優しくなんかしないで


目元がジワリと熱くなり始める


気付いてくれた大天狗に、どこか甘えようとしている自分が許せない


大天狗は私の手首を引っ張って身体を引き寄せ、顔に大天狗の手が固定され、顔を逸らさない状態になった


そこには、大天狗の真っ直ぐな目がある


茨木童子と同じ、真っ直ぐな目だ


本当に私を見ている


私は大天狗が、私にだけじゃなく誰に対しても欺くようなそんな行動をするような人に見えなかった


「…！」


茨木童子と……同じ目？


色や切れ目も違うが、それは本当に変わらない真っ直ぐ見据えた目


嘘偽りのない瞳


私はハッとした


なぜ、茨木童子があんなことを言ったのか


今まで優しかったあの鬼が突然私を拒んだのか


今目の前にいる大天狗と同じ目をしている茨木童子が


気分で人を傷つけるようなことをするだろうか？


何か理由がある、それはわからないがあの不器用な鬼のことだ


何かを守るためにやったに違いない

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