【陰陽師】女子高生と茨木童子 2

夜叉という妖怪 ページ11

「おい、いい加減にしろよ女」


夜叉はギロリッと睨みつけてきたが、私は見て見ぬ振りをした


…散々この人より怖い人から睨まれてきたから慣れたのかもしれない


酒呑童子とか荒川の主とか


「私、女って名前じゃなくてAなんだけど」


「うるせえよ、さっさと寄越せ」


あっそ、と私は言い甘味を夜叉から遠ざけた


「そんな冷たいことを言うならあーげない」

「んなっ！？おい女！てめぇ…」


私は横目で殺気立てる夜叉を見る


「乱暴に奪おうとしたら、残りの甘味ぜーんぶ落ちるからね」


私の言葉に夜叉はピタッと動きを止めた


「フンッ…なるほど、人間の女にしちゃなかなか肝が座ってんじゃねーか」


夜叉は殺気を消して、口角を上げて笑った


…あれ？何か、感心させてしまった？


威厳を感じさせようとしたのに、なんで！？


すると、夜叉は身長が低い私に合わせてくれたのか、前に少し屈んだ


「ん」


「…えっなに？」


私は予想外の展開に驚きを隠せなかった


威厳…あれ？威厳を…あれれ？


「おい、はやくしろ」


「あ…う、うん」


私は箸で挟んでいた一口サイズの甘味を夜叉の口に運ばせた


夜叉は文句言わず、黙って噛み続ける


もしかして、成功ですかこれは？


でもなんか違うような…


「ボーッとしてんじゃねーよ、意外と疲れんだよこの姿勢」


「ごめんごめん、これで最後ね」


これじゃやかましいペットに餌付けしている飼い主みたいじゃないか！！！


内心がっかりだわ…


私は最後の一口を夜叉に餌付け(？)した


「んー…やっぱうめーわ」


紫色の綺麗なロングが、サラサラと持ち主の行動に合わせて動く


黒い角は違った威圧感があった


…夜叉はずっと独りぼっちだったらしい


その分、人間を沢山殺してきた


だけど式神として活躍するうちに、戦闘では頼もしい戦ぶりをしてくれるそうな


時には仲間を庇ったり…ここにいる座敷童子も一度この夜叉に助けられたことがあるらしい


そして目の前で甘味をもぐもぐと食べているこの鬼が、恐ろしい鬼だったことなんて忘れてしまいそうだ


「ほんと、優しい人達ばっか…」


茨木童子も大天狗も夜叉も…怖い妖怪なんかじゃない


独り言を呟いた私を奇妙なものを見つめるような目で、夜叉の黄色い目が私を見た


「んだ？」


「ううん…夜叉、今日も闘うお仕事なんでしょ？頑張ってね」


「おーう」


そう生返事をし、夜叉は台所から出て行った

いざ、京へ→←家族のように

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