【陰陽師】女子高生と茨木童子 2

金色の瞳 ページ1

どこか苦しそうに言葉を呟く茨木童子


「茨木童子？」


私は少し心配になり顔を見上げる


そこには、熱くそして少し苦しげに揺らぐ金色の瞳があった


前髪にかかっていた水滴が茨木童子の顔を伝う


なぜか酷く色っぽく見えて、直視できなかった


ど、ドキドキしちゃうっ


「A…」


茨木童子の低い声が、いつもより耳に響く


あれ、私の名前…いつの間に？ちょっと前まで女だったのに


そんなことなんかより、名前で呼んでくれたことに私は胸が弾む



すると茨木童子の大きな左手が、私の頰に優しく触れた


「いっいばらき…っ」


いつもの冷ました表情とは違う真逆の一面を見ている気がする



しっかり手が添えられ、茨木童子から目が離せない状態になった



…もう、否定できないよ



私、茨木童子のことが好きだ



抑えていた想いが一気に溢れ出す



それは胸の中にうずくまる



鬼なんかに、恋してしまった罪悪感



だけど、私、真っ直ぐでどこか危ういこの鬼が好きなんだよ



自覚すればするほど、もはや後戻りはできない



「…っ、すまない」


茨木童子はハッとして私から離れた



触れていたところが、急に冷たくなり始める



私は一体何をしているんだ、と独り言を顔真っ赤にしながら呟いた



私も、抵抗しなかったことに急に恥ずかしさを覚えた



…ま、まるで茨木童子を受け入れてるみたいじゃない！



振り払えない=嫌じゃない=好き、てバレてないかな、大丈夫だよね！？



「だだだだ大丈夫！ほら、早く川から出よう？また荒川の主が来ちゃう！」



ぎこちない動きで川沿いの方へ向かう



だめだ、気にしてるなんて思われちゃだめだ！



顔がリンゴのように真っ赤になってるの、見られたくない！


落ち着くの、落ち着くのよ私！！！



「足元には気を…」



「きゃあ！」


茨木童子が言い終わる前に、私はバシャンッと水音を立てながら派手に転んだ



先程のことに気を取られすぎて、足元が見えていなかった



「いててて…」



言わんこっちゃない、と言わんばかりの表情をしながら、茨木童子は近づいて来て手を差し伸べた



「あ、ありがとう」



私は手を重ね、立ち上がる



痛む箇所を見ると、右膝から出血していた



こんな所で転ぶなんて、何やってるんだろ…

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