21.信号待ち ページ21
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運ばれてきた料理はとても美味しかった。
口いっぱいに頬張っては目を輝かせた。
料理の味付けも量も丁度よくて。
お水を注いでくれる奥さんも本当に優しくて。
星をつけるなら何個あっても足りないくらいだ。
ひたすら食べ続けて、お水を飲んで口を潤していると、
「はいAちゃん。あー｣
「？？」
スプーンでお皿の上の料理をかき集めている角名くんにそう言われて、あ。と口を開ける。
するとスプーンで掬った料理の最後の一口をくれた。
「………んっ！」
自分のとは違う美味しさに感動する。
美味しい？と優しく聞かれて、
少し恥ずかしくなりながらもコクリと頷いた。
(しまった。つい喜んで食べてしまった…)
ほとんど食べ終えていた私は、
彼にお返しをすることが出来なかった。
*
お手洗いで髪型などを整えて、
会計を済ませてからお店を後にする。
最後お店の店主とその奥さんが
笑顔で見送ってくれて何だか心が温かくなった。
カップルと間違われた時はかなり焦ったけど。
「角名くんありがとね」
「ん？」
信号待ちの間、隣に並んだ角名くんにそう伝える。
バスの中で既にお礼を言ってはいたけど、
改めてお礼を言いたくなった。
「色々と調べてくれて。すごくいい所だった」
少し照れながら隣を見上げると、
角名くんは面を食らったような顔をした。
せっかく角名くんが誘ってくれて。
せっかく友人たちが可愛くしてくれたんだ。
どうせなら、精一杯楽しむべきだ。
イヤな方向に考えるのはやめよう。
パカパカと逆側の信号が点滅しはじめて、
目の前の信号が青になるのを待つ。
私のほうを見ていた角名くんがゆっくりと前を向いた。
「…ホントは、このあと映画でもって思ってたんだけど」
「？……う、うん」
「ごめん。予定変更する」
そう静かに謝って私の手を掴んできた。
「え？……ちょ、わわっ！？」
状況を理解する前に信号は青に変わって。
彼は私の手を引きながらスタスタと歩き始めた。
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作者名：. | 作成日時：2020年1月29日 23時
