20.笑いすぎ ページ20
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ぴったりと密着したお互いの体。
大きな音を立てて動く心臓。
思わずしがみついた角名くんの腕の感覚。
「わ、うわっ…！？」
一瞬で状況を理解して、咄嗟に体を離す。
ひいい、私はなんて事を…！
バランス崩して突然タックルかますとか女子のすることじゃない。
あああ角名くんすっごいこっち見てる……！！？
「ご、ごめんなさい！」
「うん。全然へーき」
「わざとじゃないの、ほんとに、あの」
「うん。Aちゃん一旦落ち着いて」
ぽん、と必死に謝る私の頭の上に手を置く。
「ここ。バスん中ね」
しー。と人差し指を口に当てて。
控えめなそっと優しい声でそう言われた。
あっ。と慌てて口元を押さえて、落ち着きを取り戻す。
ちらりと目の前の席に視線を向けると
子ども連れの女性がこちらを見て微笑んだ。
うう、は、恥ずかしい……
また顔が熱くなって、すみません…と謝る。
すると隣から必死に笑いを堪える声がした。
「……角名くん？」
「ごめっ、何かおっかしくて」
顔を逸らして肩を小さく震わせる角名くん。
まあすぐ落ち着くだろうと思っていたけど、
なぜか彼の笑いの沸点は上がったままで。
「ふ、くくっ」
「っ、ちょっと笑いすぎ」
バスを降りるまで、ずっと笑っていた。
*
無事にお店に辿り着いて向かい合わせで席につくと早速注文を決めた。
おっとりとした印象の女性が、
私と角名くんの注文をとって奥の方へと戻っていく。
店内を見渡すとやっぱり好きな雰囲気で、
落ち着いた音楽とコーヒーの香ばしい匂いがする。
お客さんも何組かいて。みんな楽しそうに会話をしていた。
ふと視線を感じて、
テーブルを挟んで向かい側、角名くんの方に顔を向けると
彼は私のほうをじっと見つめていた。
「……ふ、ぶはっ」
「こら」
そして思い出したかのように吹き出す。
もう角名くんのツボが分からん。
ふるふる震えてる彼をムッと睨みつける。
きっと、今にらめっこしたら私は確実に勝てるだろうなと思った。
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作者名：. | 作成日時：2020年1月29日 23時
