28.サイン ページ28
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午後。クラスでの話し合い中。
なかなか話の進まない状況に飽きたのか、
「ほんまAちゃんのポンコツサーブには笑ったわぁ」
後席の侑くんが今日の午前中にあった、
体育の授業のことを笑いながら持ちかけてきた。
飛距離の全くない私の弱腰サーブがそんなに面白かったのか。
というか、バレーしてる姿を見られてたとは。
全国レベルの選手に見られていたかと思うと、
なんだか急に変な汗をかいてきた。
「そりゃ侑くんは上手だもん」
「当たり前やん。俺を誰やと思っとるん」
「高校No.1……なんだっけ」
「セッターや。アホ」
こつん。と後頭部をグーで軽くど突かれて、
反射的に「あてっ」と声が漏れた。
「俺、将来プロの選手になんねんから。ちゃんと覚えといてや」
『なりたい』じゃなくて『なる』。
そこが侑くんらしくて、ふふっと笑みがこぼれた。
「今のうちにサイン貰っておこうかな」
「おん。今なら特別にサインしたってもええよ」
ちょっぴりご機嫌な侑くんに便乗して、
じゃあお願いします、とルーズリーフを1枚渡す。
しばらくして返ってきたそれには、
どデカく『ATSUMU MIYA』と書かれてあって。
バレーボールと豚らしき動物の絵が描かれていた。
……ボールの絵うまいな。
「これ売ったら値段つくと思う?」
「せやなあ。1万は軽く、って売る気なん!?」
「冗談だよ。でも1万って…」
ぼったくり、と心の中で呟く。
でももし彼が本当にプロの選手になったら、
このルーズリーフもそのくらい貴重な物になるんだろうか。
「侑くんこの豚さんは何?豚まん?」
「は、これキツネなんやけど」
「えっ………キツネなの…?」
顔を見合わせて固まっていると、話し合いに参加しろと
二人して学級委員長に怒られてしまった。
そっか、侑くんはプロの選手を目指すんだぁ。
……角名くんは、将来何になるんだろう。
バレーボール続けてたりするのかな??
大人の角名くん。うまく想像つかないや。
って、なんでいま角名くんが出てきたんだ私。
全然関係なかったじゃんか……!!
ぼやぁっと無意識に頭に浮かんだ角名くんの姿を、
頭を横に振っては慌てて打ち消した。
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作者名:. | 作成日時:2020年1月29日 23時