人間兵器と涙 ページ30
.
菊「な・・・」
敵の集団も、おどろくというよりはもう
恐れ慄いたように固まっていて、
不気味なくらいの静寂が一瞬を包む。
肌をなめる神聖な沈黙。
横「・・・エル、ラビ、ムサシ
カラメロ、アルマ」
横山さんは怖いくらいの無表情で
ぽっかりと開いたクレーターを見下ろしながら、
横「今ここで俺の力を見たヤツを
一人残さず始末しろ」
――――ひどく冷静で、冷酷な命令。
Aさんが、金色をチラつかせてにっと笑った。
「了解なのです」
それが合図のように、黒陽は一斉に動き出す。
どこからかマルとすばるくんが飛び出してきて、
対人試合が大得意というマルが解放されたかのように猛烈な勢いで棍棒を振り回し、
すばるくんは機関銃をふたつ、両脇に抱えてたばこに火をつけ、その弾丸を容赦なく相手に浴びせた。
村上さんは、一人たりとこの場から逃さないよう式神と術式を使って相手の退路を断つ。
亮ちゃんはもう狂ってしまったんやないかってくらいの笑い声を上げながら暴れ倒していて、
Aさんは――――
その左腕に、もはやタタリ神か何かに取り憑かれているとしか思えない真っ黒の影を宿して、ザクザクと敵を斬っていく。
文字通りの地獄絵図の真ん中で
俺はもう、その場にへたりこんだまま動けなくて、
横山さんがブンと腕を一振りすると、それまで宙を旋回していた八咫烏の群れが一直線に飛んでいく。
直後に菊池の、うわあ、という悲鳴が響き・・・
何か質量のある物が潰れるような音はした、でも、俺はこわくてそちらを見ることができひんかった。
横「予定が大幅に狂ったわ・・・全く」
村「ま、しゃーない。華麗に地雷を踏み抜きよったからな・・・にしても幹部のくせにあっけないな」
不穏な会話。
横山さんは床にへたっとる俺に近づいてくると、
あの白っぽいひとみのまま
そこに黒い太陽を閉じ込めて
赤い唇を歪ませて微笑んだ。
横「色々驚かせてすまんな」
大「・・・・・」
横「もう察してるやろうけど」
その軍服の肩に、一羽の烏が止まる。
横「俺は、世界で唯一
未完とはいえ天使の力を持つことに成功した人間兵器。
陽派の行う人体実験の、元・被験体や」
やめて、もう、ききたくない
俺は疲れきって返事もできず
ただ、一粒
理由のわからない涙を床に落とした。
265人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
べに(プロフ) - megumonkeyさん» わ〜〜ありがとうございます!^^ めちゃくちゃ気まぐれになりますが更新していきますね! (2021年9月27日 15時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
megumonkey(プロフ) - 続きか読めてとても嬉しいです‼︎ (2021年9月27日 12時) (レス) @page38 id: fa40db60d7 (このIDを非表示/違反報告)
megumonkey(プロフ) - 更新ありがとうございます!楽しみに待っていました!! (2020年10月5日 18時) (レス) id: fa40db60d7 (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - ココナッツさん» 戦闘シーンわりと中2クサイけど書いててめっちゃ楽しいです〜〜!! (2020年8月1日 17時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - ぬあああああああ!!!!!(言葉にならない素晴らしさ) (2020年7月25日 15時) (レス) id: 672a09a9f5 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べに | 作成日時:2020年7月11日 20時