月と忠誠と銃口 ページ9
.
浄化の終わった翡翠丸を受け取って
研究室から地上に戻ってきた。
これから夜食を作りに行くという亮ちゃんとは途中で別れ、自室に戻るべく屋敷の中を歩いていると。
大「・・・ん?」
ふと――――話し声がきこえてきて、見たら、俺の進行方向とはべつの廊下の先。
渋「・・・お前、部屋から出るなって言うたやろ」
いつもより数段低く、でも感情のこもった声を出すすばるくんが、右腕をまっすぐに伸ばして――――リボルバーの引き金に指をかけていた。
その銃口の先には・・・・・Aさんの姿。
え、なんで?
俺は思わず曲がり角に身を隠し、息を潜めてようすを伺う。
「・・・ちょっと用があるだけなのです」
渋「黙れ。今日が何の日かわかっとるんか?」
「わかってるのです。でも、ちょっとだけ裕さんに話が――――」
渋「ノアに近づくな」
すばるくんは今にも引き金を引いてしまいそうなほど、心底怒っているように見えた。
いつも仏頂面で
でも仲間を見つめる目はつめたくなんかなくて
気難しそうやけどおだやかな普段の彼とは、違う。
端整な横顔に怒りが滲んでいる。
ノアに近づくな――――その言葉の意図が、俺にはわからない。
なんでそんな怒ってるんやろ・・・?
横山さんとAさんなんて普段からだいぶ仲良いし、兄妹みたいに一緒におることも多いのに。
「・・・相変わらずすばるは裕さんばっかりなのです」
Aさんが言った。
すばるくんから、はたとも目を逸らさないまま。
渋「黙れよバケモノ」
その横顔は、おそろしいくらい無表情や
.
「・・・わかったのです」
渋「・・・・・」
「部屋に戻るのです」
しばらくしてAさんが諦めたように息をつくと
その代わり、と続けて口を開いた。
「もしも何かあれば、今日はすばるのところに行くのです」
無表情から一転
いつものように悪戯っぽい笑顔で小首をかしげて。
すばるくんが、チッ、と
ここまで聞こえるほど大きな舌打ちをする。
渋「勝手にしろ」
くすっと笑うAさんが
踵を返して立ち去っていく。
その後ろ姿が消えた後、ようやく銃を下ろしたすばるくんも反対方向に踵を返し、去っていった。
な、なんやったんや。今のは・・・?
2人の姿が見えなくなってからも
俺はしばらくひとりハラハラしたままで。
・・・この日は、上手く寝つけへんかった。
183人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
べに(プロフ) - ゆうみさん» ゆうみさん、コメントありがとうございます!わああとってもうれしいです、励みになります!(;;)お話はまだまだ続くので、頑張って更新していきますね! (2020年7月2日 1時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ゆうみ(プロフ) - とっても面白いです!シリアスなのにコメディタッチで、とっても読みやすいしとにかく物語に引き込まれました!一気に読み進めて続きが楽しみです!更新頑張ってください♪ (2020年6月30日 21時) (レス) id: bea5fb83fd (このIDを非表示/違反報告)
べに(プロフ) - ココナッツさん» わーーんめちゃくちゃうれしいですうう(;;)ありがとうございますなのです!(エルちゃん風) (2020年6月22日 21時) (レス) id: e3692f9d07 (このIDを非表示/違反報告)
ココナッツ(プロフ) - べにさんお疲れ様です!私個人の意見ですが、もうこれは無料で読めるアプリの域を超えているような素晴らしさなのです(エルちゃん風) (2020年6月21日 8時) (レス) id: 5d604581ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:べに | 作成日時:2020年5月22日 21時