雫

8粒。 ページ8

しばらく長い通路を早歩きで進んだ。
早歩きって言っても流星のペースの早歩きはあたしにとって小走り程度。



足の短さを呪った。



体力も無いしすぐ息切れする。
これからはちょっと動くべきだなぁ。
今更思ってももう仕方ないけど。



『大丈夫か』



少し前を歩いていた流星が立ち止まってあたしの様子を確認する。
大丈夫だと言いたいところだが。
なかなかしんどい顔をしてしまった。



『もうすぐ外出れるから。もうちょい頑張れ』



首を縦に振ると今度はペースを緩めて歩いてくれた。
だいぶ息も整った。



大きな扉が目の前に来るとまたあたしの姿を確認して、1度立ち止まる。
暗証コードを入力してぎぃーっと控えめな音を立てながら扉を開けた。



一気に風があたしの頬を叩いてくる。
外の世界だ。
本当に…外だ。



『行けるか？』


｢外…｣


『こんなもんちゃうて笑』



背中を押されて全身で風を感じる。
前を見据えれば、一見真っ暗に見える風景の中に木がザザザっと並んでいた。



どこかで水の流れる音も聞こえる。
自然の音で耳がいっぱいになっていく。



『今日は月が見えるんや。この先で見れる』



手を引っ張られて、周りの景色に目をキョロキョロとさせながら歩いた。
何もかも、大きかった。

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